ジョージア、EU加盟候補国として認められず 与党創設者のオリガルヒが原因か?

ジョージアのEU加盟候補国入りを支持するデモ(トビリシ、6月20日)|Shakh Aivazov / AP Photo

◆ロシアに近いオリガルヒが原因? 政治の劣化深刻
 ジョージアの首都トビリシでは20日にEU加盟を支持するデモが行われ、ここ数年で最大規模となった。ジョージアが候補国入りできなかったのは、与党「ジョージアの夢」の創設者で有力オリガルヒ(政治的影響力を有する新興財閥)のビジナ・イヴァニシヴィリ氏の存在にあると見る人が多い。

 FTによれば、欧州議会はイヴァニシヴィリ氏の政治的影響力を懸念し、ロシアとの繋がりやジョージアの政治的プロセスの悪化における役割を理由に、同氏に制裁をするよう求めたという。同氏は公式な政治的役割を持っていないが、ロシアの政策に沿ってジョージア政府の政治的方針を誘導しているとアナリストの間では見られている。「ジョージアの夢」は2012年の結党以来、国民を憂慮させEUとの関係を緊張させる多くの問題を起こしてきたとされる。野党や大統領も与党のやり方を批判しており、元国防副大臣も国の腐敗を指摘している。

◆EUの真意は? 不公平という指摘も
 公共政策の研究機関、欧州政策分析センター(CEPA)の名誉フェロー、カート・ヴォルカー氏は、EUからのメッセージは、国家的問題を解決するため意見の相違はあっても協力し、民主的制度のもと解決策を見つけよ、ということだと指摘。条件付きとはいえ、東方拡大に慎重だったEUがロシアの残忍な侵略行為をきっかけにジョージアにEU加盟の可能性を示したのだから、この機会を逃してはならないとする。今回のEUの決定に対する最善の対応は、超党派で一致団結して欧州委員会の勧告のすべてに対処する方法を見つけ、それを実現することだとしている。

 一方アルジャジーラに寄稿した外交政策研究所のマクシミリアン・ヘス氏は、欧州委員会のジョージアへの改革に関する指摘は妥当だとしながらも、モルドバとウクライナも同様の問題を抱えているとする。両国だけを候補国としたのは象徴的なジェスチャーであって、そうであればジョージアも同じ扱いとすべきだったという意見だ。

 EUがジョージアの候補国入りを先送りしたことは、欧州・大西洋の仲間入りをするという願望からジョージア政府を遠ざけるだけでなく、政治的二極化を深め、さらにはロシアの影響力を強めることになりかねないと同氏は指摘する。また、ロシアのウクライナ侵攻に対し、ウクライナ国旗を掲げともにロシアと戦うという意志を示し、難民を受け入れ義勇兵を送り、ロシアとのビジネスを断つなどしてきた多くのジョージア国民の姿勢に言及。その人々をジョージア政府の行動を理由に罰すれば彼らを失望させることになり、EUの決定は誤りだと主張している。

【関連記事】
EUに入りたい、ロシアとも親しくしたい…ロシアと天然ガス輸入契約のセルビア
北欧NATO加盟、トルコ「1年遅らせる」と脅しも 反対の思惑とは? 迫るNATO首脳会議
欧州の勢力図を塗り替えるロシアのウクライナ侵攻 EU、NATO加盟に傾く国々

Text by 山川 真智子