技術的に大前進、中国3隻目の空母「福建」 電磁カタパルト搭載、艦載機の幅広がる

空母「福建」の進水式(6月17日)|Li Gang / Xinhua via AP

◆より多様な航空機を搭載可能 偵察機も運用か
 福建最大の特徴は、航空機の発艦に電磁式カタパルトを中国空母として初めて搭載した点にある。これにより福建は、従来よりも重量がある各種航空機を射出できるようになる。既存艦の遼寧および山東は、スキーのジャンプ台のような発射台を用いている。傾斜を利用して加速するこの方式は、発艦できる航空機の大きさと重量に制限があった。米戦略国際問題研究所のマシュー・ファニオレ専務理事は、ワシントン・ポスト紙に対し、「より大きく、より多様で、より頑強」な航空団に対応できると述べている。偵察機の艦載もあり得るとの見方だ。

 ただし、電磁式カタパルトを含め、中国で設計・製造した福建が期待通り動作するかは未知数だ。台湾のシンクタンク「国防安全研究院」の准研究員は、米国営ラジオ放送のボイス・オブ・アメリカ(6月19日)に対し、福建は関係者の期待に応じるよう建造を急いだ可能性があるとの見方を示した。一部装備が設計通り動作しなかったり、他国の装備と比較して品質に劣ったりする可能性があるという。

◆艦名は台湾に面する福建省に由来
 今回の進水式は、中国・台湾間の武力衝突の緊張が高まるなかで行われた。台湾統一を進めたい習近平国家主席は、中国・福建省を念頭に本艦を命名したという。米インサイダー誌(6月17日)は、「中国は金曜、3隻目となる空母を進水させた。台湾のまさに対岸にある中国の州の名前にちなんでいる」と報じた。

 中国は軍事的プレゼンスを強めており、今年4月には南太平洋に浮かぶソロモン諸島と異例の安全保障協定を締結している。ガーディアン紙は、この協定が「アメリカとその同盟国を驚かせた」とし、ソロモン諸島に中国の軍事拠点ができるのではないかとの不安をあおったと報じている。ソロモン諸島首相はその後、基地建設の観測の打ち消しに追われた。

 今回進水した福建について、中国海軍は詳細な能力を秘密のベールに隠したままだが、内容次第ではアジアの安全保障にさらなる緊張をもたらしそうだ。

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Text by 青葉やまと