「米原潜の購入を計画」前豪国防相の暴露が物議 問題残る豪潜水艦計画 仏と和解も

オーストラリアのアルバニージー首相(6月10日)|Mark Baker / AP Photo

◆コリンズ級引退迫る 原潜納入は先の先
 フランスとの関係改善のめどは立ったが、潜水艦建造計画自体には問題が残る。現在のコリンズ級潜水艦は2038年より退役し始める予定だが、マールズ豪新国防相はモリソン前政権が定めた2038年までに原子力潜水艦を建造するというスケジュールは非現実的だと発言した

 実は前国防相のダットン氏が、前政権下で2030年までにアメリカ製バージニア級原子力潜水艦2隻を購入する計画があったことを暴露している。同氏の発言は、オーカスで共同して豪潜水艦を建造するという協力関係にひびが入りかねないと懸念する政府関係者やアナリストから不評を買っている。しかし実際のところ、前政権でも現実的には原子力潜水艦の納入は2040年代半ばの可能性が高いとされていたという。近年、南シナ海での中国軍の危険な行為の増加がオーストラリアでは大きな関心事となっており、ダットン氏は現在のディーゼル・エレクトリック方式の潜水艦では、2035年以降は中国と戦うことはできないと主張している。(軍事ニュースサイト『ウォーゾーン』)

◆繋ぎに日本製? 空白期間を懸念
 豪戦略政策研究所上級アナリストのマーカス・へイヤー氏は、コリンズ級から直接原子力潜水艦に移行することは難しいと主張する。国防省は賛成していないが、政府はその間の能力を考える必要があるとしている。(SMH)

 ブラクスランド教授も同様の考えで、選択肢に「既製品」の潜水艦を購入することも含まれるとした。とくに日本と韓国は近隣のパートナー国であり、オプションも良く価格も欧州製より安いと説明している(SMH)。とはいえ最初からしっかり計画していれば繋ぎの買い物を検討することもなかったはず。豪潜水艦建造計画は現在も迷走中のようだ。

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Text by 山川 真智子