簡単ではない「中ロ接近」 難しくなる中国の国際関係

中国の王毅外相(左)とパプアニューギニアのマラペ首相(6月3日)|Bai Xuefei / Xinhua via AP

◆「中ロ接近」「中ロ協力」は政治的に簡単ではない
 こういう図式になれば、メディアや専門家の間では欧米と対立する中国とロシアが接近するという中ロ接近、中ロ協力という言葉が世の中を飛び交う。確かに、最近も中ロ両軍による日本周辺での合同軍事訓練や合同飛行が実施されたように、軍事的けん制を行うために両国が一定の範囲内で協調することもあるだろう。そして、現にロシアによるウクライナ侵攻以降、むしろ中ロ経済の結びつきは強くなっているという。中国はロシア制裁をしておらず、中国税関総署が4月13日に発表した3月の貿易統計によると、対ロシアの輸入額が前年同月比26.4%増の約9800億円と大きく伸びた。

 しかし、東南アジアや中東、アフリカや中南米諸国などとの関係を維持・発展させたい中国からすれば、ロシアを擁護する立場を明確にすることは難しい。そうすれば、欧米諸国からの非難の声が高まるのは必至で、それによって第3諸国の中国離反が進む可能性もあり、中国としていまのロシアは簡単に接近できる相手ではない。

◆中国は孤立を恐れている?
 最近、中国の王毅外相が南太平洋10ヶ国を次々に訪問した。これだけの国を一気に訪問するのはクアッドへの焦りかもしれない。王毅外相は5月30日にフィジーで開催された10ヶ国との外相会談で安全保障協定の締結を提案したが、一部の国々から懸念が表明され、結局のところ合意に至らなかった。欧米との対立が避けられず、ロシアとの協調も難しいなか、中国は第3諸国との関係強化を目指しているが、これは言ってみれば中国が孤立を恐れているのかもしれない。中国の脅威は先行的に報道されるが、実は中国が最も警戒しているのは米国ではなく孤立ともいえる。

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Text by 和田大樹