アジア版NATOは現実的か?

ブリュッセルのNATO本部のNATO旗と加盟国旗|Olivier Matthys / AP Photo

 ロシアによるウクライナ侵攻により、欧州では安全保障上の懸念が広がるなか、これまで軍事的に中立を保ってきたフィンランドと非同盟を貫いてきたスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を正式に行った。プーチン大統領はこれまでNATOの東方拡大に対して強烈な不満を示し続け、ウクライナへの侵攻によってNATOをけん制する狙いもあったはずだ。しかし、結果は皮肉にもNATOのさらなる東方拡大につながっている。そしてスイスも最近、NATOに接近する動きを見せている。スイスは1815年以降永世中立を維持しているが、スイスとNATOが合同で軍事演習を実施する可能性が報じられている。NATO条約では、加盟国1国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなすと明記されており、スウェーデン、それ以上にロシアと1300キロにわたって国境を接するフィンランドが加盟すれば、ロシアはさらなる脅威を感じることになるだろう。

◆NATOへ接近する日本
 昨今、日本はNATOへ接近する姿勢を示している。6月下旬には、スペイン・マドリードでNATO首脳会合が開催される予定になっており、岸田総理はドイツで開催される主要7ヶ国(G7)首脳会議(サミット)に出席した後、そのままスペインに向かう予定となっている。

 インド太平洋地域では中国による力による現状変更や海洋覇権の試みが続いているが、近年は日米豪印によるクアッドだけでなく、インド太平洋地域に海外領土を持つ英国やフランス、ドイツ、オランダなど欧州各国も同地域へ安全保障的な関与を示しており、日本が欧州と安全保障関係を強化する意味でも岸田首相の参加は有益なものだろう。インド太平洋から遠い欧州各国を同地域に関与させ続けるためにも、日本の役割に米国やオーストラリアも期待している。

Text by 和田大樹