「シリアの虐殺者」ドボルニコフ将軍がロ軍新司令官に 懸念の声が上がる理由

ドボルニコフ将軍(右、2016年)|Alexei Nikolsky / Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

◆シリアの惨状、再来に警戒
 空爆の戦果が評価されたドボルニコフ氏は、翌2016年に「ロシア連邦の英雄」として表彰されている。今回、残虐な行為をいとわない氏がウクライナ侵攻のトップに起用されたことで、攻撃がいっそう過激化する恐れがある。米ワシントン・ポスト紙(4月11日)によると、アメリカ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のジェイク・サリバン氏はCNNの番組に出演し、「この独特な将軍の履歴書には、シリアという別の戦場において行われた、民間人に対する残虐行為が含まれている。そして今回の戦場においても、同じことが繰り返されると予想される」と述べ、被害の拡大に警鐘を鳴らした。

 ヒル紙も同じく、ウクライナでの非人道的行為が今後も継続する可能性に警戒感を示している。同紙によるとホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「この将軍はすでに、シリアでの残虐行為に対する監督責任を負っている」と指摘し、ウクライナにおける惨状の再来を懸念している。

◆司令官着任でどう変わる
 今後の展開についてヒル紙は、ロシア軍が現在抱えている士気の低下と兵站の問題に対し、ドボルニコフ氏が事態の打開を試みるのではないかと指摘する。アメリカの元在ロシア防衛駐在官であるケヴィン・ライアン元准将は同紙に対し、ドボルニコフ氏が「凶暴」な作戦を実施し、ウクライナに一定の被害を与えるとの予想を示している。ただし、「しかし彼は、これまでほかの誰かが悩まされてきたのと同じ制約、同じリソース不足の状況で任に就くことになる」とも述べ、着任で状況が一変するとの考え方には疑問を示している。

 一方、ワシントン・ポスト紙は、これまで軍事的リーダーがおらず結束の欠如から兵站問題や軍事的失態に陥ってきたが、「ドボルニコフ氏のもとで変わるかもしれない」と述べている。厳格な統率と容赦ない兵器の投入で知られる新司令官により、ウクライナに対するいっそうの非人道的攻撃が懸念される。

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Text by 青葉やまと