ロシア・ウクライナ戦争、アフリカの視点と人種差別問題

リヴィウ駅のホームで列車を待つナイジェリア人学生(2月27日)|Bernat Armangue / AP Photo

◆戦禍、人種差別、偏見
 現状、ナイジェリア政府からの明確な指示はなく、帰国したところで学業を続けられる可能性も低く、ナイジェリア人学生にとっては戦禍におかれたウクライナを離れることが難しい可能性があるとクオーツは報じる。モロッコ政府は学生の帰還を呼びかけ、エジプト政府は留学生の帰国の手配を進めたとのこと。ガーナ政府に関しては、国民の非難の声を受けて、学生帰還に向けた対策を進めると発表したが、実際の支援は限られているようだとフォーリン・ポリシーは指摘する。

 陸路で国境を渡ろうとするアフリカ人学生が、差別的な待遇にあっているという状況もあり、これに対しては、アフリカ連合は、国籍や人種のアイデンティティに関係なく、すべての人々が紛争を逃れて安全な場所に移動するための権利を保有するものであるとし、この状況を糾弾した。アフリカ各国やインドからの学生らがウクライナの国境警備隊から押し返されるなどのひどい扱いを受けている状況は、SNSのビデオなどで拡散した。

 さらには、今回のロシア・ウクライナ戦争に関する一部報道に対しても、人種差別的な要素が批判されているとアルジャジーラは報じる。問題となったのはCBSニュースのある記者による報道で、イラクやアフガニスタンのような何十年も紛争が続いている場所ではない、比較的ヨーロッパ的な文明化されている場所であるウクライナで戦いが起こっているといったようなニュアンスの内容だ。これに対して、非白人、非欧州系の人々を非人間化するようなものであるとの批判が集まった。BBCの報道でも、ある記者が「青い目、金髪をしたヨーロッパの人々が殺されるのを目の当たりにして、とても感情的になっている」との発言をし、その白人至上的な表現が指摘、非難された。

 すべての戦争・紛争は、地域やその規模に関係なく、被害と悲しみをもたらすものであるが、今回のロシア・ウクライナ戦争に関しては、西欧中心的なパラダイム優勢のパワーバランス、そして人種差別と偏見が改めて表層化し、その被害者となっている人々とコミュニティnさらなる悲しみと怒りをもたらしている。

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Text by MAKI NAKATA