リトアニアへの「制裁」めぐりEUが中国をWTOに提訴 その経緯とは?

欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(2021年12月7日)|Olivier Matthys / AP Photo

◆中国の圧力が効かない理由
 リトアニアは、「3億5700万ドル相当の製品(最多は穀物)を中国に輸出し、逆に13億ドル相当の中国製品(最多は電子製品)を輸入する」国だ。(ル・モンド紙、1/6)一連の制裁措置により、リトアニアから中国への2021年12月の輸出は、対前年同月比で91%減った。とはいえ、もともと中国との取引は同国の1パーセントに満たない。アンドリヤウスカス准教授も、リトアニアは、ヨーロッパで最も中国への依存度が低い国の一つだと述べる。そのせいで、中国お得意の「圧力」もあまり効かないというわけだ。(フランス24)

 もちろん、一連の制限により損失を被った企業もあるはずだが、リトアニア政府は早くも1月5日には、この損失を補う1億3000万ユーロの援助計画を発表した(ル・モンド、1/6)。また台湾も1月半ば、台湾企業とリトアニア企業の共同プロジェクト支援のための10億ドルの基金の創設を発表している(レ・ゼコー紙、1/13)。

 中国と東欧関係の専門家であるメルカトル中国研究所(Mrics)のステック氏は「リトアニアは中国と離れて失うものよりも得るものの方が多いことに賭けた」と見ている(フランス24)。この賭けは吉と出るか凶と出るか。

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Text by 冠ゆき