2022年の国際テロ情勢 懸念すべき国際社会の関心低下

テロを警戒してパトロールする警察(ジャカルタ、21年3月29日)|Wulandari Wulandari / Shutterstock.com

 2022年の世界情勢も当然ながら米中関係や新型コロナが主軸となり、経済安全保障を重視し始めた日本も基本的に中国やロシア、北朝鮮などいわゆる伝統的な安全保障イシューを重視していくことになる。だが世界を見ると、安全保障上の脅威であるテロの問題は依然として進行中で、しかもアルカイダやイスラム国を支持する武装勢力は南アジアや中東、アフリカなど各国で活動し続けている。今後はアフリカがテロのエピセンターになるとの指摘もしばしば聞かれる。今年の国際テロ情勢はどうなっていくのだろうか。

◆改善にも悪化にも向かわない可能性が高い
 先に結論を述べると、昨年と比べ全体的にテロ情勢が大きく動くことはないと筆者は予測する。改善に向かわないし、情勢が大きく悪化することもないだろう。昨年、アフガニスタンではイスラム国関連組織によるテロ事件数が大幅に増え、アフリカのサヘル地域やモザンビーク、コンゴ民主共和国などではイスラム過激派によるテロが深刻化しているが、今年も昨年同様の情勢が続く可能性が高い。こういった武装勢力はアルカイダやイスラム国などグローバルなイスラム過激派への支持を表明しているが、実際の活動のほとんどは地域的なものであり、そこから欧米への攻撃などグローバルな影響を及ぼす可能性は低い。9.11テロの再現に挑戦するような意図をどこまで具体的に持っているかはわからず、しかも国際的なテロ対策が実施されている上ではそのようなテロを実行できる能力はない。アフガニスタンではタリバンが実権を奪還し、アルカイダなどが活動できるテロの温床となる恐れは否定できないが、今年そこから新たなテロリスクが差し迫ったように現れる可能性は低い。

Text by 和田大樹