2022年の米中関係はどうなるのか 不安定な台湾海峡、対立の行方

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◆最悪なシナリオは米中両国とも最大限避ける
 しかし対立構図は続いたとしても、米中両国とも軍事的衝突など最悪のシナリオは避けるだろう。大国の対立というと米ソ冷戦が思い浮かぶが、その時と違い今日の米中は経済的に相互依存関係にあり、中国経済の悪化は米国経済を直撃する。両国とも自らの意思を行動で示すことになるが、対立構図は基本的には経済領域で行われることになり、今年も経済領域を舞台に制裁合戦などが繰り広げられ、軍事的オプションは最大限回避されることになろう。
 
◆偶発的な事態によって急激な経済関係悪化も
 一方、軍事的シナリオは最大限回避されるとしても、台湾軍と中国軍の偶発的な衝突などによって緊張が一気に高まり、それによって米中の経済関係が急激に悪化する可能性は現実的に考えられるだろう。両軍の衝突によって米軍が介入して戦闘が激化するという可能性よりは、それによって米国が中国への経済制裁を大幅に強化し、中国もそれに経済制裁で対抗するという方が現実的だ。それによってどのような影響が出てくるかを日本は考える必要があるだろう。

 昨年、台湾と中国との関係は極めて悪化した。日本国内でも台湾有事の際における邦人退避を検討する動きも見られた。台湾情勢においても軍事オプションは最後の手段になるだろうが、台湾情勢の悪化が経済に与える影響をまずは考える必要があるだろう。

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Text by 和田大樹