中国の極超音速兵器、アメリカが衝撃を受けている理由 「スプートニク・ショック」の再来とも
◆「米は不意を突かれた」
WSJによると米軍関係筋は、これは「高度な演習」であり、「中国のプログラムがこれまで知られていたよりもさらに先進的なものだという表れ」だと捉えている。ミサイルは大陸間弾道ミサイル(ICBM)よりも低高度を音速の5倍以上の速さで飛行するため、アメリカの既存のレーダー網で補足することは極めて困難だ。
アメリカのレーダー網は、北極上空経由の飛翔体を主な脅威として想定している。この範囲外となる南極経由の飛行を中国は実験で成功させており、これも焦りを招く要因となった。FTは、「この進展により、ペンタゴンの科学者たちは不意をつかれた」と報じる。国防総省の研究機関である国防高等研究計画局の専門家たちは、実験のデータを目下分析している段階だ。中国がなぜこのような極超音速飛翔体を開発できたかについては、専門家も「依然として確信がもてない」という。
◆「スプートニク・ショック」再来か
米空軍のフランク・ケンドール長官はロイター通信(12月1日)に対し、中国と「相当に長く続いている軍拡競争」の関係にあるとの認識を示した。量的競争だけでなく、質的な競り合いも軍拡競争とみなされるのだとケンドール長官は指摘する。中国の極超音速兵器の進展を許してしまった背景には、「米軍がイラクとアフガニスタンに資金を集中させる一方、超音速兵器から目を離してしまっていた」事情があるとケンドール長官は語る。
こうした資金力の差は、兵器のテスト回数に如実に現れている。WSJは、過去5年間でアメリカが9回の極超音速実験を行っているのに対し、中国は数百回をこなしてきたと指摘する。
米宇宙軍のデビッド・トンプソン作戦担当副司令官は、中国とロシアに比べればアメリカの極超音速兵器開発は「さほど進んでいない」と語る。中国の進展は、過去にロシアがアメリカを恐怖させたスプートニク・ショックを想起させる。スプートニク1号の打ち上げ成功は、宇宙開発のリーダーを自負してきた当時のアメリカに深いショックを与え、宇宙開発のみならず軍事開発上の危機感をも全土に広げた。FTによると、米軍幹部トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、まさに現状をスプートニク・ショックに近いと形容している。
宇宙開発ではアポロ計画をもって挽回したアメリカだが、ミサイルの軍拡競争を制することはできるだろうか。
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