艦艇が大隅海峡も通過 欧米をけん制する中露、その思惑とは

ロシア海軍ウダロイⅠ級駆逐艦|sivapornphaiboon1983 / Shutterstock.com

◆中露それぞれの思惑
 だが、理由はそれだけではない。中露それぞれの思惑もあるだろう。まず、ロシアとしては米軍のプレゼンスや日米安保の適用範囲が北海道から北上することを避けたい。ロシアが北方領土で態度を軟化させない背景にはそれも影響しているが、ロシアとしては北太平洋での勢力圏を確保したい狙いがある。ロシアにとってウラジオストクは冬も凍らない日本海の拠点であり、北方領土やウラジオストクは政治経済的にも重要な海域である。ロシアは中国との合同軍事演習だけでなく、10月には独自で2回も日本海で軍事演習をするなど自らの存在感を強く示している。

 また、中国にとって日本海はますます重要な海域となっている。バイデン政権になって以降、温暖化や気候変動が安全保障に与える影響に世界の関心が集まっているなか、北極海の海氷面積は温暖化によって減少している。北極海の下には世界で未発見の原油13%、天然ガス30%が埋蔵されていると言われ、中国はそれらへのアクセスを強めている。中国から北極海へ通じるルートは、東シナ海から対馬海峡、津軽海峡から太平洋(宗谷海峡からオホーツク海、太平洋)、ベーリング海となり、日本海は必然的に中国の北極ルートとなる。習政権は2018年に独自の北極政策を発表するなど、第3の一帯一路とも言われる「氷上のシルクロード」の建設に努めている。よって、ロシアとの関係を維持・発展させるともに、日本海での影響力拡大は中国の資源獲得政策にとって極めて重要となる。

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Text by 和田大樹