今日のテロ情勢をどう見るか、企業に求められる2つの視点

ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件(2016年7月)|Sk Hasan Ali / Shutterstock.com

◆テロ情勢を判断する一つの基準は未遂事件の数
 日本では毎年、公安調査庁がテロ要覧を発行している。また、外務省や警察庁などもテロ情勢に関する情報を発信している。それらが重要であることは間違いないが、それらは「発生したテロ事件」をもとに事件数や犠牲者数を我々に示しており、阻止された事案がカウントされることは少ない。

 欧州刑事警察機構は8月、欧州内で2017年に実行されたテロ事件が10件だった一方、事前に措置された事件は11件、2018年は実行7件、阻止16件、2019年は実行3件、阻止14件、2020年は実行10件、阻止が4件だったと公表した。また、英情報局保安部(MI5)のマッカラム長官は9月、過去4年間に「最終段階」に入っていたテロ計画を31件阻止したことを明らかにした。

 テロ情勢における真のリスクは、発生したテロ事件数ではなく、阻止された事件数をもとに評価されるべきだ。治安当局が阻止したから発生しなかっただけであり、発生件数に阻止件数を加えてテロのリスクは示される必要がある。

 MI5は米軍がアフガニスタンから撤退する前の7月、アフガニスタン情勢から刺激を受けた過激派分子が国内でテロを起こす恐れがあることに言及した。今日のアフガニスタン情勢がどのように各国におけるテロ阻止件数に影響を及ぼすのか注視していく必要がある。

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Text by 和田大樹