中国建設のカンボジアのダム、住民の生活を破壊 人権団体が報告

ダム建設時の様子(2015年7月27日)|Mekong Commons / flickr

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、カンボジアで2018年に完成した中国出資のダムが、地元の人々の生活を蝕んでいると報告した。ダムは中国が進める「一帯一路」構想の一部となっており、ほかの多くのプロジェクトと同様、透明性の欠如、地元民の懸念の軽視、環境への負の影響などで批判されている。

◆地元民の生活を破壊 補償や支援も少なく
 問題となっているのは、カンボジア東北部のセサン下流2水力発電所ダムだ。アジアで最も広いダムの一つで、その建設により、メコン川の2つの支流であるセサン川とスレポック川の合流点の上流の広い地域が水没した。

 報告書によれば、ダム建設のため何世代にもわたってこの地域に住んでいた5000人ほどが移住した。しかし、プロジェクト開始前に地元の人々との適切な協議がなされず、懸念もほぼ無視された。対象者の多くは不十分な補償で立ち退かされ、転居先でも粗末な住居やサービスしか提供されず、職業訓練や就業支援も受けられなかったという。ダムは上流および下流の何万もの人々の生活に影響を与えたが、彼らのコミュニティへの補償や支援はなかった。

 セサン下流2ダムはそれまで自給自足の生活をしてきた先住民族や少数民族のコミュニティを破壊したとHRWのアジア・アドボカシー・ディレクター、ジョン・シフトン氏は批判する。ダムは魚の繁殖に不可欠な回遊を妨げており、漁獲高が激減。地域の漁業収入に大きな影響を与えている。再定住した場所は岩が多く、農業の収穫量も減った。以前の村での果物や木の実からの収入もなくなり、森林で採取したキノコや薬草などの損失に対する補償も行われていない。

Text by 山川 真智子