タリバンが直面する「20年の変貌」、新価値観で育った若者たち
◆民主化で発展 市民生活も改善
しかし、この20年で生活のあらゆる面が改善されたと同氏は述べる。大都市はもちろん、小さな町にも商業的繁栄がもたらされ、商店、アパート、家が国中に建設され、インフラも大幅に改善された。国際的援助も受け、2001年には男子ばかりで90万人だった学生数は、2020年には950万人以上にもなり、そのうちの40%は女子だった。(同上)
APも、1996年にタリバンが占領した時期からアフガニスタンは格段に進歩したとする。カブールの発展は目覚ましく、舗装された通りには、タワーマンションやガラス張りのオフィスビル、ショッピングモールが並び、別世界となった。西洋の支援を受けた近代的な政府は開発援助で満たされ、その下で都市は変貌し、市民も成長したと解説している。
カブール在住のアフガニスタン人ジャーナリストBilal Sarwary氏によれば、街頭にいる人々は自国に誇りを持ち、90年代にタリバンの下で経験したような抑圧的な支配に耐えられない新世代のアフガニスタン人だと述べる。彼らのなかには、タリバン時代を直接知らない者も多い。国内には活発な若者文化もあり、市民ジャーナリズムも育っている。スマートフォンやインターネット、ソーシャルメディアを知るアフガニスタン人の現実に、今後タリバンは対応を迫られるだろうと同氏は指摘している。(カナダCBC)
◆タリバン内部も意見分かれる 統治の課題は新世代
保守的な地方出身者を中心とするタリバンは、いまのところ穏健な姿勢を示し、人々の権利を尊重するという声明まで出している。ただ、タリバンのなかにも分裂はあるとSarwary氏は指摘する。市民同様、タリバンも新世代の戦闘員で構成されており、今後のアフガニスタンを寛容と鉄拳のどちらで統治するのかで、意見が分かれているということだ。(同上)
同氏によれば、世界や欧米政府の最上層部に接しているタリバンの政治的な指導者たちは、国の正統性や資金の価値を理解している。一方、市民に銃口を向けるいまの司令官や戦闘員は、1990年代とは違い、彼らの指導者たちと同世代に属してはいない。新世代のアフガニスタン市民に加え、とくに若く熱血で血の気の多い戦士たちをタリバンがどう扱うのかは、注視しなければならないと同氏は述べている。(同上)
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