中国がタリバンに接近する2つの理由

タリバンのバラダル師(左)と中国の王毅外相(右)(7月28日)|Li Ran / Xinhua via AP

 また、中国は巨大経済圏構想「一帯一路」に基づき、中央アジアやパキスタン、イランなどで影響力を高めているが、その地域ではアフガニスタンだけが空白地帯となっている。中国には一帯一路構想をアフガニスタンでも強化することで、中央アジアとパキスタンを繋ぐ狙いもあることだろう。

◆ウイグル系武装勢力への懸念
 そして、それ以上に大きな理由がウイグル系武装勢力をめぐる動きだろう。国連安保理によると、アフガニスタン国内には新疆ウイグル自治区の中国からの独立を目指す武装勢力「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」のメンバー500人あまりが、中国との国境地帯にある北東部バダフシャーン州やワハーン回廊周辺を中心に活動しているという。中国は長年、ETIMなどウイグル系武装勢力の活動を強く警戒し、それが新疆ウイグル自治区に飛び火し、独立をめぐる動きが活発化することに神経を尖らせている。タリバンのなかにはアルカイダやETIMなどの戦闘員と密接な関係にあるメンバーも少なくないことから、中国はタリバンと良好な関係を構築することでETIMなどを排除する狙いがある。

 すでに、中国はタリバンに対してテロ組織との関係を断つよう求めており、今後はタリバンがどのような政策を進めていくかがカギになる。タリバンとしても、ETIMなどと伝統的な繋がりがあるが、タリバン政権でアフガニスタンを統治していくにあたっては中国からの援助は欠かせないことから、今後は難しい選択を迫られる場合も考えられる。

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Text by 和田大樹