ホームグロウンテロ増加の恐れも アフガン治安悪化がもたらすグローバルリスク

パキスタン南東部スピンボルダクのパキスタン国境検問所をタリバンが掌握したと発表した後、パキスタン側の国境の町チャマンでタリバンの旗を掲げる人々(7月14日)|Tariq Achkzai / AP Photo

 またはタリバンはパキスタンやイラン、タジキスタンなどとの国境付近へも支配領域を拡大しており、その影響が飛び火する恐れも指摘されている。とくに、パキスタンとアフガニスタンの国境付近では武装勢力の活動が盛んで、タリバンのメンバーは国境を越えパキスタン側でも勢力を持っているとも言われる。パキスタン・タリバン運動(TTP)との関係も利用することで、今後、パキスタン国内の治安が悪化する恐れがある。パキスタン政府もそれを警戒している。

◆英国情報機関も懸念を強める
 一方、遠い国では英国からも懸念の声が聞かれる。英国の情報機関MI5は今月中旬、米軍を中心とする外国軍がアフガニスタンから完全撤退すれば、同国の治安がさらに悪化するだけでなく、イスラム過激思想に感化された英国人がアフガニスタンに渡り現地のテロ組織に参加し、帰国して国内でテロを実行する恐れがあると懸念を示した。また、アルカイダなどアフガニスタンで活動するイスラム過激派は外国軍の完全撤退を自らの勝利と認識し、ネット上での広報活動を活発化させ、それによって英国内に潜む過激派分子が刺激を受け、単独的にテロを起こす恐れがあるとの懸念も示した。

 このMI5の発表は、可能性としては低いものの、これまでのテロ研究の視点から論理的には間違っていない。そして、このリスクは英国だけでなく、米国やフランス、ドイツなどほかの欧米諸国にも当てはまる。近年はイスラム国の衰退や白人至上主義テロの高まりから、極右の動向に注目が集まってきたが、我々は再びイスラム過激派の動向を注視する時期に差し掛かっている。

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Text by 和田大樹