高まる起源再調査を求める声 中国大反発「米の狙いは政治化」「他国で調査を」

Laurent Gillieron / Keystone via AP

◆米の動きを警戒 政治利用と中国反論
 ここ数ヶ月で、パンデミックは研究所の中で始まり、人為的に作られたウイルスが関与しているかもしれないという見方が広がっている。とくにバイデン米大統領が調査を米諜報機関に指示したことで、その傾向が強まっている。また、新型コロナウイルスはコウモリから発生し、ウイルスを媒介する動物から人間に飛び火したと多くの科学者が主張していたが、いまだにそのルートが判明していないことも影響している。

 流出説の信ぴょう性が高まるなか、パンデミックの起源を研究所に結びつける動きは、政治的な動機によるものだと中国は反発している。中国外交部の報道官は、アメリカの動きは米中対立のテーブルの上にこの問題を戻し、陰謀論を誇張するものだと主張。アメリカが新型コロナの起源調査に関し同盟国とともに中国に圧力をかけるとしていることに対し、アメリカには中国を脅迫したり威嚇したりする権利も、国際社会を代表して中国の顔に泥を塗る資格もないと述べた。(中国国営英字紙グローバル・タイムズ

 さらに外交部は、途上国を中心とする48ヶ国が、新型コロナ起源調査が政治的に進められていることに反対してWHOに書簡を送ったと発表。世界保健総会(WHA)の決議に従い、関連する加盟国が協力して調査を進めることを求めたものだと同部は説明し、アメリカが一部の国に政治的操作を強要し科学に反しているのとは対照的に国際社会の正義を反映した声だと称えた。(グローバル・タイムズ

◆他国の調査も要求 解明ますます困難に
 中国はウイルスが海外で発生した可能性を示唆してきており、WHOの調査団を招いた際にも、輸入冷凍食品からの感染ルートを強く推していた。今年春のWHOの年次総会でも他国での調査を続けるべきだとしている。

 新華社の映像ニュースは、武漢で最初の感染者が見つかる数ヶ月前から、アメリカで感染者や感染が疑われる人が見つかっていたとし、WHOが次の調査をするのなら、ぜひこれらについても精査すべきという外交部報道官の発言を報じた。さらに新華社のニュース記事は、フランスで広がった株は武漢と同じではなく、それよりもっと古いものだったと現地メディアが伝えていると紹介している。

 中国は動物を経由した自然由来説から転換し、ウイルスの起源は国外にあったという主張を強めており、新型コロナの起源の解明はますます複雑かつ困難になりつつある。

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Text by 山川 真智子