考察:共産党100年演説、習近平主席の狙い

Li Xueren / Xinhua via AP

◆国内の不満分子を警戒
 一方、習政権が牽制したい相手は外にだけいるわけではなく、国内にも存在する。7月1日、北京では共産党創立100年を記念する式典が大々的に開催されたが、それに伴って北京では式典前から市内で厳重な警備態勢が敷かれ、23日からは天安門への入場が制限された。バイデン政権になってからは、新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって国際的な非難が高まっているが、2013年10月にはウイグル人が乗る車両が天安門に突っ込む事件が発生しており、北京の警備当局はテロを含め不測の事態が起きることを警戒していた。

 そのようななか、中国外務省前で男が火をつける動画が6月28日にネット上に投稿された。放火騒ぎとみられるが、男は警察官に拘束される前に何かしら叫び声をあげて抗議していたといわれ、この件で中国当局は取り調べを行っていると29日の声明で発表している。中国国内では共産党に不満を持つ人は決して少なくなく、習政権では治安維持費が国防費を上回るなど、少数民族を中心に国内から不満分子が増えることを警戒している。

◆21世紀の始皇帝を目指す習近平
 2022年秋には習氏の3期目の続投が決まることが確実視されており、習政権は長期的に続くとみられる。中華民族の偉大な復興を掲げる習氏は、建国100周年となる2049年に向けて社会主義現代化強国を目指しており、中国の政治経済的な影響力拡大は今後も続く。そこに米中関係の抜本的改善などは考えにくく、米中対立は長期的に続くであろう。

 習近平は21世紀の始皇帝となるのだろうか。2030年、2040年と中国を取り巻く国際環境が変化していくなかで、習近平氏の発言もより具体性を帯び、米中関係や日本周辺の安全保障をめぐって政治的な緊張が高まる可能性があるだろう。今回の習氏の1時間にわたる演説からは、以上のようなことが想像できる。

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Text by 和田大樹