悪化する豪中関係 豪の新型コロナ調査要求で加速

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 こういったなか、オーストラリアと英国は6月15日、両国間の自由貿易協定(FTA)を締結した。これによって、衣類や農産物、自動車などの輸出入で関税が削減され、両国間の貿易関係がいっそう深化するとみられる。オーストラリアもできる範囲で脱中国を進める動きを見せる一方、EUから離脱した英国も今後の世界経済のハブになるインド太平洋への接近を図っており、インド太平洋各国とのFTAだけでなく、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)にも参加する予定で調整が進んでいる。英国と中国との関係も冷え込んでおり、オーストラリアと英国の関係はいっそう深化しそうだ。

◆安全保障面でも対立する豪中
 一方、安全保障面でもオーストラリアの中国に対する懸念が強まっている。その主な一つが南太平洋をめぐる情勢だ。近年、中国は南太平洋にも一帯一路戦略を展開し、バヌアツやフィジー、サモアやパプアニューギニアなどを莫大な資金で支援するだけでなく、同地域で政治的な影響力を高めようとしている。オーストラリアは南太平洋を自らの裏庭と位置づけており、中国が軍事的にも南太平洋で影響力を高めることを警戒している。

 また、近年、オーストラリア国内では中国からのサイバー攻撃が相次ぎ、国家の安全保障にかかわる機密情報が盗まれるような動きもみられる。こうした動きを防止するため、オーストラリア議会は2018年6月にスパイ活動の防止強化を可能にする法案を可決した。今後も両国関係が改善に向かう兆しは見えない。政治と経済の世界で両国間の対立が続きそうだ。

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Text by 和田大樹