北京五輪ボイコット論、米で広がる 人権問題に懸念

Andy Wong / AP Photo

◆いじめっ子には厳しく 開催は世界の汚点
 意見はアメリカ以外からも出ている。インドのサンデー・ガーディアン紙に寄稿した元イギリス外交官のジョン・ドブソン氏は、ボイコットを熱く支持する。そもそも中国のこれまでの行為は、人権活動家の取り締まりから少数派への嫌がらせまで、IOCが掲げるオリンピック憲章の「普遍的な基本的倫理原則の尊重」や「人間の尊厳の保持」と合致しないと述べる。

 それにもかかわらず、中国は国際社会がボイコットを受け入れるわけはないと考えており、金の好きなIOCが開催権をはく奪する可能性もほとんどないと同氏は論じる。外国政府や多国籍企業は中国の怒りを買うことを警戒し何もできないとし、中国は経済力を利用したいじめっ子だと述べている。

 同氏は、中国が五輪をプロパガンダのために利用することは明白だとし、五輪が共産党に正当性や栄光を与えるために使われてはならないと断じる。2022年の冬季大会が開催されればそれは世界全体の汚点になるとし、ボイコットすべきだとしている。

◆IOCルールの再考も 拙速な判断にも注意
 一方、ボイコットが最良ではないという意見もある。ブルームバーグの論説は、「オリンピック開催場所、会場、他のオリンピック・エリアにおいては、いかなる種類の示威行動または、政治的、宗教的、人種的な宣伝活動も認められない」というオリンピック憲章50条3項の変更を求めている。

 アメリカ・オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)では、五輪トライアル競技において、人種的、社会的正義の抗議行動を認めると発表した。これにより五輪では許されていない、膝をつくことや「平等」などのメッセージの入ったTシャツの着用などが可能となった。もしIOCが2022年の北京大会でUSOPCスタイルのルールを認めれば、チベットやウイグルを支援するメッセージをTシャツで送ることもできるとし、ボイコットよりも効果的に中国の人権問題にスポットライトを当てることができるとしている。

 WPは、国民の支持を得たボイコットでも、後になって後悔することがあるのも歴史の事実だと述べる。モスクワ五輪では68%のアメリカ人が賛成していたが、1984年の調査では、支持すると答えた人(29%)より、間違いだったと答えた人(48%)の方がはるかに多かった。ボイコットの効果がなかったと考える人が増えたこと、また1984年のロサンゼルス五輪でソ連から報復ボイコットを受けたことで、気持ちが変わったことが原因かもしれないと同紙は見ている。

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Text by 山川 真智子