アメリカのウイグル族「ジェノサイド」認定めぐる、米中英の動き

AP Photo / Ng Han Guan

 アメリカは、ジェノサイド(大量虐殺)を犯したとして中国を批判した。この人権問題をきっかけに、中国と西側諸国の間に緊張感が高まっている。

 国務長官としての職務を終えようとしているマイク・ポンペオ氏は1月19日、新疆地区のイスラム教徒に対する中国の政策について「非人道的な犯罪であり、ジェノサイドにあたる」と明言している。

 同日、イギリスの議会では中国をめぐる法案が僅差で否決となった。その法案とは、ジェノサイドを行っていると判断された国との貿易を禁止するというものだ。

 中国の西の外れに位置する新疆地区には、おもにイスラム教徒のウイグル族が暮らしている。中国は同地区における措置について、分離主義者およびテロリストの脅威に抵抗するために必要な措置だとして、人権侵害を否定した。

◆中国がジェノサイドと批判される理由
 ポンペオ氏は、AP通信が昨年調査・記録したウイグル人に対する不妊や中絶の強要を指摘した。さらに強制労働もあったとしており、こちらについてもAP通信の取材により、アメリカに輸入された洋服、カメラ、パソコン用モニターなど各種製品との関連性が明らかになっている。

 ポンペオ氏は文書のなかで、「新疆地区のジェノサイドは現在も継続中で、これは一党独裁制をとる中国のウイグル族を崩壊に追い込もうという組織的な試みだ」と述べている。同氏は、ウイグル族に「Uyghurs」ではなく「Uighurs」の綴りを用いている。

◆中国側の反応
 中国は、同国の憲法と法律はすべての市民が平等だと定めているとして、新疆地区の人権に関する歴史と政策を強く擁護している。また、不妊・中絶の強要や強制労働については、中国の評判を傷つけ、発展を妨害しようとする者たちの嘘だとして、否定している。

 新疆ウイグル自治区共産党委員会宣伝部の徐貴相副部長は報道陣に対し、「避妊や中絶といった判断は各人が自由に選択するものであり、いかなる組織や個人も干渉できない」と述べている。

 また、中国外務省の華春瑩報道官は1月20日、ポンペオ氏を「退任間近の道化師」とし、同氏が中国をジェノサイドなどの非人道的な犯罪の加害者と認定したことについては、「取るに足らないことだ」と述べている。

◆今後の展開
 ポンペオ氏のジェノサイド批判を受けただちに影響が広がる様子はないが、アメリカとしては対中政策を固めていく上で今回の件にも配慮が必要となるだろう。

 ジョー・バイデン大統領は中国に対し、強硬姿勢を維持せざるを得ない。同氏とその国家安全保障担当者らは、これまでも今回のような批判に支持を表明してきた。

 バイデン大統領が国務長官に起用したアントニー・ブリンケン氏は1月19日、トランプ政権が中国への強硬姿勢を強めたのは正しい判断だったが、ほかの地域における人権問題には向き合わず、同盟国をないがしろにしたという点では問題への取り組みは不十分だったとしている。

◆中国側の動向
 中国としては、バイデン政権と早々に小競り合いとなるのは避けたいところだろう。トランプ政権下で一触即発となった緊張感がここから緩和に向かう可能性も踏まえ、ポンペオ氏への批判はほどほどに、対応を調整中だ。

 ほかのデリケートな問題を扱うときと同様、中国は外国メディアによる新疆地区へのアクセスを厳しく制限しており、国内での議論については公式発表以外の情報を明かさないようにしている。

 中国人民大学で国際関係を教える時殷弘教授は、トランプ政権からの「最後の批判」を受け、目下の米中関係にさらなる緊張が走る可能性があるという。同氏によると米中間の緊張感を緩和できる望みは薄いとされていたが、今後の数週間、数ヶ月間でさらに悪化するものとみられる。

◆イギリスでの動き
 イギリスの議会ではEU離脱後の貿易に関する法案の改正案が、319票対308票で否決された。改正案では高等法院がジェノサイドを犯したと判断した場合に、イギリス政府はその国との二国間貿易協定を無効にするよう求めていた。

 ドミニク・ラーブ外務大臣は、「改正案は善良なものではあるが、何の効果もないどころか、逆効果をもたらす」と述べている。

 保守党のなかにもこれに反発する党員は多く、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教コミュニティの指導者らと並び、今回の改正案を支持した。ボリス・ジョンソン首相は中国の人権侵害や国際規範への違反といった疑惑をめぐり、代表を務める保守党内からもより強固で一貫性のある対中政策を求められることになるだろう。

Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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