米軍のアフガン完全撤退、懸念される国際テロ情勢への影響

カブールを訪れたフランク・マッケンジー米中央軍司令官(海兵隊大将)(1月31日)|Lolita Baldor / AP Photo

◆治安悪化が懸念されるアフガニスタン
 米軍と同様に、NATO加盟国も駐留部隊を9月11日までに完全撤退させる方針を明らかにしている。しかし、外国部隊の支援なしにアフガン政府軍がタリバンの攻勢を食い止めることは難しい。現時点でタリバンはアフガニスタン全土の実に52%を支配しており、外国部隊の撤退とともにタリバンは攻勢を仕掛け、アフガン全土を再び掌握しようとするだろう。そうなれば治安悪化は避けられず、過激なイスラム武装勢力の活動が活発化すると同時に、アルカイダがそこを再び聖域に使用する可能性も否定はできない。

 米軍を中心とする外国部隊の完全撤退によって、アルカイダがすぐに脅威として復活する可能性はきわめて低いが、アフガニスタン情勢を中長期的に考えれば、新たな国際テロの土壌を生む可能性は念頭に入れておく必要があるだろう。また、上述のようにアルカイダやイスラム国の関連組織が依然として各地で活動している現状からは、アルカイダ本体が徐々に存在感を取り戻すなかで、各地のテロ組織が士気を高め、活動をエスカレートさせていく可能性がある。

 今回、バイデン政権が完全撤退を発表した背景には、急速に脅威として高まる中国の存在があるのだろうが、インド太平洋地域に集中し過ぎるがあまりテロへのエンゲージメントが弱まれば、かえって米国の安全保障を脅かすシナリオになる恐れもある。

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Text by 和田大樹