ミャンマー・クーデターを静観する中国の戦略

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◆経済を重視して進む中国とミャンマーの蜜月関係
 そして、政治的な結びつきも近年強化されている。たとえば、アウン・サン・スー・チー氏は、2017年12月1日から3日にかけて北京を訪問して習近平氏と会談し、雲南省の昆明とヤンゴン、西部ラカイン州にある港町チャオピューを鉄道と高速道路の双方で結ぶ構想「中国・ミャンマー経済回廊」を進めていくことで合意した。また、習近平氏も去年1月17日から18日にかけてミャンマーを訪問し、ミャンマー経済回廊の推進、ヤンゴン市の新都心開発など33項目からなる覚書を締結した。今年に入っても王毅国務委員兼外相が1月11日から12日にミャンマーを訪問し、アウン・サン・スー・チー氏やウィン・ミン大統領らと会談し、新型コロナウイルスの中国産ワクチン30万回分を提供することを申し出た。

◆今後はASEANを舞台とする米中対立が激化か
 軍事クーデターについては、インドネシアやマレーシア、シンガポールなども非難しているが、カンボジアやタイ、フィリピンなどは内政問題だとしてASEAN内部は二つに割れている。最近、中国はASEAN各国への中国産ワクチン提供を強化しているが、今後は東南アジアで影響力をめぐる米中の競争がいっそう激しくなる可能性がある。

 今後のミャンマー情勢において、バイデン政権がどれほど存在感を示すことができるかも注目点だ。バイデン政権が存在感を示す政策を取れなければ、その分中国の影響力が益々強まっていく可能性が高い。

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Text by 和田大樹