バグダッドで3年ぶりのISテロ それが意味するもの

Hadi Mizban / AP Photo

 たとえば、米国のシンクタンク「Washington Institute」がまとめた最新の統計によると、昨年ISがイラクとシリアで犯行声明を出したテロ事件は、1月88件、2月93件、3月101件、4月151件、5月193件、6月87件、7月115件、8月139件、9月99件、10月101件、11月85件、12月75件だったとされる。

◆なぜ1月21日なのか
 一方、なぜこのタイミングなのかという問題もある。発生したのは1月21日だが、ISが敵視する米国では1月20日にバイデン政権が発足したばかりだ。近年ISの弱体化が指摘されるなか、ISとしては規模の大きなテロを実行することで、イラクからの軍撤退を進める米国を政治的にけん制する目的があったようにも感じる。

◆新型コロナウイルスはISに利するのか
 1月23日にも、フセイン元大統領の生まれ故郷でもあるティクリートで、イラク治安部隊に協力する部隊を狙ったテロ攻撃で11人が死亡、10人以上が負傷したというが、ここでもISの犯行が指摘されている。

 しかし、今後のISの行方を予測するならば、IS自身の組織力や資金力だけでなく、イラク政府に対する市民の不満や怒り、新型コロナウイルスの感染拡大で生じる社会経済的ダメージ、また、イラク治安部隊の治安能力も重要なファクターとなる。イラクでは一昨年大規模な反政府デモが発生し、多くの犠牲者が出たが、新型コロナウイルスによる経済的疲弊はより治安情勢を悪化させる恐れがある。若者がテロの世界にのめり込んでしまうことが懸念される。

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Text by 和田大樹