王毅外相の日韓訪問の意図は? バイデン政権を警戒する中国

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 中国の王毅外相は11月末、日本と韓国を急遽訪問し、菅首相(11月24日)や文大統領(11月26日)と相次いで会談した。新型コロナウイルスの第3波が猛威を振るっているなかでの訪問ということもあり、中国側には何かしらの思惑があることは想像に難くない。今回の会談では、中国側から打診があったとされる。では、中国側にはどんな思惑があったのだろうか。

◆バイデン政権の国際協調路線への警戒心
 国際協調路線、多国間主義を重視するバイデン政権になれば、フランスやドイツ、カナダなどトランプ政権下で冷え込んだ欧米諸国との関係は抜本的に改善される。大統領選の勝利が確実になってすぐに、バイデン氏は日本や韓国、欧米主要国の指導者たちと相次いで電話会談を行った。

 そして、新型コロナウイルスの感染拡大以降進む日米豪印のクアッド協力やインド太平洋構想などについては、バイデン政権下でさらに動きが加速する可能性がある。バイデン氏は菅首相との会談で、尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることに言及したが、東シナ海や南シナ海、西太平洋での海洋覇権問題については日本やオーストラリア、インドとの多国間協力をトランプ政権以上に重視することだろう。

 トランプ政権の4年間、中国は「二国間対立」というなかで米国に対峙してきたと言えるが、バイデン政権下ではより「多国間による圧力」に直面する可能性がある。よって、中国としてはバイデン政権の発足前から、日本や韓国など周辺諸国へのテコ入れを強化し、多国間的な対中包囲網を崩したい狙いがある。

 とくに韓国での会談では、習近平国家主席の訪韓についても議論されたというが、中国は日本より韓国の方が米中対立のなかで難しい立場にあること(冷え込む米韓関係や韓国経済の中国依存など)を理解しており、今後も日本より韓国へのテコ入れを重視することだろう。

Text by 和田大樹