印中対立はエスカレートの一途か 揺るがない「自立したインド」と「戦狼外交」

Altaf Qadri / AP Photo

◆経済的結び付き以上に国境・領土問題を重視するインド
 もちろん、いかにインドが中国に強硬な姿勢を見せようとも、インドが依然として中国との貿易に依存している事実に変わりはない。自国で生産している製品には中国からの輸入品(部品や原材料)が数多く使用されており、インド政府が推進する自国製造業の振興には、中国という存在が欠かせない。一例をあげれば、7月13日付のヒンドゥスタン・タイムズ紙によると、インドの医薬品輸入の63%以上が原薬と中間体であり、その70%近くを中国に依存しているという。

 しかしながらインドは現状、中国とのこうした経済的な結び付きよりも国境・領土問題を重視している節がある。また、冒頭で紹介したイニシアチブ「自立したインド」を推し進めていることからもわかる通り、中国に経済力や軍事力で差をつけられているものの、インドはほかの周辺諸国と異なり、中国依存型の経済を受け入れる気は毛頭ないように見える。仮に受け入れるとすれば、インドと良好な関係を保つ西側先進諸国から見放され、中国の支援に頼らざるを得ない場合だが、インドの将来性やマーケットサイズなどを考慮すれば、中国以外の国からの投資を期待できるため、可能性は低いと言えるだろう。

 一方で中国もインドを含むさまざまな国との間に国境・領土問題を抱えているが、「戦狼外交」路線を変更する気配はまったくなく、相変わらずインドを見下すような外交姿勢を貫いている。このような状況では、両国の溝が埋まることは決してないだろう。

 コロナ前は(表面的とはいえ)比較的安定していた印中関係は、コロナ禍、ラダック衝突で風向きがガラリと変化してしまった。インドが対中政策を見直したことでチャイナマネーという「切り札」も機能しなくなりつつあるいま、両国の対立はますますエスカレートしそうな気配を見せている。それは南アジア地域の安定、発展の行末にも大きな影響を及ぼすことになるはずだ。

Text by 飯塚竜二

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