WHOも利用か 国際機関で影響力を高める中国

Li Xueren / Xinhua via AP

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、欧米では深刻な状況が続いている。これまでを振り返ると、筆者にはやはり拭いきれない問題がある。それは中国の行動だ。現在、北京政府は、国内の感染が終息したかのように、感染源国から支援国へと舵を切った外交を展開している。そして、WHOという国際機関を通じて、感染拡大の防止で主導権を握り、自らの汚点を何とかして払拭しようとしている。

◆感染源国から支援国へと舵を切る北京
 中国の国家国際発展協力署は3月26日、世界89ヶ国、4つの国際機関に新型コロナウイルスによる肺炎の予防・抑制の支援を行っており、今後さらに強化していくと発表した。

 そして、そういったイメージを強化していく手段としてか、北京政府は新型コロナウイルスで陽性反応が出たとしても、症状が出なければ感染者にカウントしていないとみられ、米国などは意図的に過小報告されていると不快感を示している。

 確かに、本当の感染者数や死亡者数、現地の情勢などで不透明な点が多いのは間違いない。まるで中国の国防費の伸びを見ているかのようだ。(中国の国防費は毎年鋭く増加の一途を辿っているが、欧米諸国は本当の国防費はもっと多いと長年懸念し続けている。とくに、米国は自らの国防力に中国が迫ってきている危機感から、透明性ある国防費の公表を中国に強く求めている。)

 一方、筆者には、2011年の高速列車事故の際、北京が落下した車両をそのまま土の中に埋めたように、新型コロナウイルスにおける汚点を闇に葬りたいかのような行動を取っているかのように映る。

Text by 和田大樹