WHOも利用か 国際機関で影響力を高める中国

Li Xueren / Xinhua via AP

◆WHOは中国の傀儡機関か?
 新型コロナウイルスによる中国の一連の行動を見ていて、筆者は国際機関で存在感を高める中国を想像できる。

 実は現在、15ある国連の専門機関のうち、国連食糧農業機関(FAO)、国連工業開発機関(UNIDO)、国際電気通信連合(ITU)、国際民間航空機関(ICAO)の4つの機関で中国人がトップを務めている。以前も、特許や商標など知的財産の保護を専門とする世界知的所有権機関(WIPO)で次期事務局長選挙が行われ、米国などが推すシンガポール特許庁長官のダレン・タン氏が、中国出身の王彬穎WIPO事務次長を決選投票で破ったが、中国は国際機関でも存在感を高めている。

 そして、今回の新型コロナウイルスにおいては、世界保健機関(WHO)を舞台にその議論が高まっている。WHOトップのテドロス事務局長は、近年多額の支援を中国から受けるエチオピアの出身で、2005年から2012年にかけて保健大臣、それから2016年まで外務大臣を務めた大物政治家で、中国との政治的癒着は十分に想像できる。

 中国は3月上旬、新型コロナウイルスで大きく貢献したとして、日本円にして21億円をWHOに寄付すると発表した。テドロス氏の就任以降、WHOは北京寄りの活動を続けているとの見方もあり、現在のWHOを中国の傀儡機関だと批判する人も少なくない。また、先月には英国の国会議員たちが、WHOが新型コロナウイルスの感染地域を示す地図で、台湾を中国の一部に含めていると批判した。

◆中国は今後さらに国際機関で存在感を高めるか?
 国際機関には高い中立性と責任が求められ、法の支配や客観的裁量に基づいて各国の利害を調整し、国際社会の公益を追求しなければならない。南シナ海の九段線について、ハーグ仲裁裁判所は、無効だとする判決を下したが、中国はまったくそれを守っていない。また、尖閣諸島の領有権についても、国際司法裁判所で決着をつけることにもまったく動かない。

 国連は一国一票制が原則である。中国としては一帯一路の参加国などを中心に、各専門機関の事務局長選挙の際、チャイナマネーを駆使してできるだけ多くの票を集め、国連での存在感をさらに高めていくという戦略があるのだろうか。

Text by 和田大樹