GSOMIA騒動の爪痕、北京への抵抗……今年の極東安保 20年のカギは?

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 今年も終わりが迫ってきた。世界ではさまざまな問題が発生してきたが、我々日本が位置する東アジアの安保情勢はどう変化してきただろうか。また、来年の同情勢を展望するにあたり、どこに注目すべきだろうか。

◆改善への光が見えない東アジア
 2019年の東アジア情勢を振り返ると、一言で言うと、依然として改善への光が見えない。

 トランプ大統領は今年2月、ベトナム・ハノイで2回目となる米朝首脳会談を行った。この会談で、北朝鮮は寧辺にある核施設を廃棄することを条件に経済制裁の全面解除を要求したが、米国はほかの核関連施設への査察や廃棄も突きつけ、結局何も合意されないまま会談は修了した。それ以降、今日まで関係改善へのプロセスは停滞し、両国の間で再び緊張が走るなど、度重なる米朝首脳会談の意義が問われる事態となっている。

 そして、韓国・文在寅政権は、日韓GSOMIAの一方的破棄を宣言し、結果的には失効直前に破棄撤回を決定したものの、日米韓の安全保障上の連携に亀裂を生じさせただけでなく、それによって日韓、米韓関係にも深い溝が生じた。

 一方、新疆ウイグル自治区や香港、台湾では、それぞれ度合いは異なるが北京との摩擦が続いている。新疆ウイグル自治区は「浸食後」、香港は「浸食中」、台湾は「浸食前」と表現できるかもしれないが、今年6月以降、香港では数十万から数百万人規模の抗議デモが毎週のように発生し、一部は暴徒化して香港警察と衝突し、逮捕者が多数出た。また、至近距離で銃撃され負傷する市民も確認された。最近になり、香港ではウイグル族への連帯を示す市民1000人規模の集会が開かれるなど、北京と戦うウイグルや台湾との結束を呼びかける動きが見られる。

 それに対し、習近平国家首席は台湾の蔡英文政権への圧力もいっそう強めている。近年、北京は南太平洋諸国へ接近し、去年はソロモン諸島とキリバスが台湾と断交し、北京と新たに国交を締結するなど、習近平氏は台湾の外交能力を破壊する戦略を押し進めている。台湾では、香港の次はと台湾だとの警戒感が強くなっている。

Text by 和田大樹