侵攻から80年、なぜいまポーランドはドイツに賠償を求めるのか?

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 9月1日は、ナチスドイツによるポーランド侵攻から80年を記念する日だった。ポーランドによる記念式典にはドイツの大統領も参加し、自国の歴史的罪への許しを請うと述べたが、ナチスによって多大な被害を受けたポーランドは、いまになってドイツに金銭的賠償を求めている。背景にあるのは、与党「法と正義(PiS)」による史実に基づいた政治だ。

◆悲劇のポーランド、賠償請求権は放棄していた
 ポーランドは第二次世界大戦でドイツ、ソ連に占領され、人的、経済的に大きな被害を受けた国だ。戦後は、ソ連の衛星国として共産圏に組み込まれた。第二次世界大戦中にポーランドの人口の約17%が死亡したとされており、このなかには、ドイツのホロコーストで殺されたユダヤ系ポーランド人300万人も含まれている。

 BBCによると、戦後、チャーチル、ルーズベルト、スターリンは、ポーランドに対するドイツの補償は、ソ連を通じ、現金ではなく物資、インフラ、食糧などの形態で支払われることに合意した。1953年には、ポーランドはロシアと旧東ドイツとの条約に調印し、賠償請求権を放棄している。また、ドイツの統一に関する米英仏ソの会議の後、1990年にポーランドとドイツは国境条約に調印した。さらに1991年には善隣友好条約に調印。この際、ポーランド側から賠償金に関する話はなかったとし、ドイツはこれをもって問題解決という暗黙の了解があったと理解している(AFP)。

Text by 山川 真智子