中国の海洋戦略 第4列島線、第5列島線とは?

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◆逆に描かれる第4、第5列島線
 一方、第4、第5列島線は逆の方向に描かれる。すなわち、舞台は太平洋ではなくインド洋だ。

 まず、第4列島線はパキスタン南部グアダルから、インド西部、スリランカ南部ハンバントタ、インド洋の英領ディエゴガルシア(米軍も駐留)を通過して南下する。中国はグアダル港とハンバントタ港の使用権を、それぞれパキスタンから43年、スリランカから99年獲得しており、中国とインド洋、アフリカを繋ぐ経済的戦略が見えてくる。

 そして、第5列島線は中国がアフリカに唯一軍事基地を保有するジブチからアフリカ東部とマダガスカルの間を南下し、南アフリカに至る。近年、マダガスカルにとって中国は最大の貿易相手国となり、天然資源の確保を目的に中国企業の積極的な展開が見られるが、地元住民の強い反対の声もあり、中国への警戒心も高まっている。

 第4列島線、第5列島線は、太平洋に描かれる3つの列島線とは違い、米国と直接対峙するものではない。また、その狙いは軍事・安全保障的なものというより、一帯一路に基づく経済的な戦略が色濃く見える(もちろん、政治的なものも含むだろうが)。しかし、第4列島線、第5列島線を他国がどう判断するかは別問題だろう。とくに、両列島線はインド洋に描かれていることからも、インドが強い懸念を示すに違いない。今年春の総選挙で圧勝したモディ首相は、最初の外遊先としてモルディブとスリランカを訪問し、インドの同海域でのプレゼンスを強く示そうとした。また、「太平洋軍」が「インド・太平洋軍」に改名されたように、米国も太平洋とインド洋をセットにして対処する姿勢を堅持している。

 今後のインド洋の海洋秩序において、第4列島線、第5列島線は一つのバロメーターとなるかもしれない。とくに、インドや米国がどういう姿勢を見せてくるかがポイントとなろう。

Text by 和田大樹