F-35大量購入、地域のパワーバランスへの影響は?「中国と日米豪印」から見た意味

U.S. Air Force photo by Master Sgt. Donald R. Allen / Wikimedia Commons

◆日本のF-35は日米豪印同盟の切り札とも
 中国は現在、国産の第5世代戦闘機J-20の配備を進めている。航続距離などの一部の性能ではF-35を上回るとも言われており、数で圧倒的優位に立つ中国の空軍力が、戦闘機の性能面でも、F-15主体の日本を大幅にリードしつつあるのが現状だ。2017年に配備が始まったJ-20には、エンジントラブルが相次ぐなどいまだ課題が多く、さらなる改良が急がれている。総合性能ではF-35がJ-20を上回っているというのが一般的な見方だ。そのため、チェンミン氏らアジアの軍事専門家たちは、日本のF-35の大量発注は、中国が優位に立とうとしている現在のアジア太平洋地域の空のパワーバランスをひっくり返すほどのインパクトがあると見ているのだ。

 同盟国の反応も概ね肯定的だ。とくに、近年中国との軍事的対立を強めているインドは、日本のF-35導入を大歓迎している。国際経済メディア『インターナショナル・ビジネス・タイムズ(IBT)』(インド版)は、F-35による日本の防衛力強化の「明らかな副産物」として、「中国の顕著な軍拡主義と包囲網の圧力にさらされているインドもまた、恩恵を受けることになる」としている。

 IBTは、「アメリカは、中国の軍拡と経済的拡張主義に対抗するため、日本、オーストラリア、インドとより密接な同盟関係を築いた」とし、その一角の日本の空軍力の強化は、4ヶ国同盟の総合力の向上も意味し、インドとしては労せずして対中抑止力を上げる「ボーナス」だと見る。さらに、「日本がアメリカに100機以上の最新式のF-35戦闘機を発注したことにより、アジアの軍事バランスは長期的に変わることになるだろう。この動きにより、ドナルド・トランプ米大統領は、南シナ海などで拡大する中国の軍拡主義にチェックメイト(王手)をかけることに成功した」と、米国主導の戦略を評価する。

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Text by 内村 浩介