F-35大量購入、地域のパワーバランスへの影響は?「中国と日米豪印」から見た意味

U.S. Air Force photo by Master Sgt. Donald R. Allen / Wikimedia Commons

◆中国識者も日本のF-35導入に納得
 日本のF-35大量購入の背景には、現在の主力戦闘機であるF-15Jの老朽化が進み、耐用年数、近代化改修ともに限界を迎えているという厳然たる事実がある。南シナ海を中心に海洋進出を進め、軍拡に邁進する中国と地理的に直接対峙している以上、アジア太平洋地域の軍事的パワーバランスを維持するためにも、日本の戦闘機戦力の近代化は危急の課題であり、その選択肢としてF-35は妥当だというのが世界の軍事専門家の共通した見方だ。F-15は1970年代の基本設計の第4世代“ロートル戦闘機”であるのに対し、中国は、最新の第5世代戦闘機の配備を着々と進めている。

 戦闘機として世界最高性能を誇るF-22はアメリカが輸出禁止措置を取っているため購入を断念した経緯がある。一方、F-35は先の墜落事故などもありいくつかの欠点が指摘されるものの、F-22やライバル中国のJ-20と同じ第5世代ステルス機であり、攻撃機としての運用も可能で、バージョン違いで艦載機にもなるマルチロール機だ。柔軟な運用ができるという点では、憲法の制約を受けながら総合的な防衛戦略の変わり目にある日本には、適した機体だと言えよう。

 中国の識者ですら、次のように語る。「この(F-35の)契約は、中国の脅威に対するカウンターバランスを作り上げる一助となるだろう」(北京で活動する軍事評論家、ツォー・チェンミン氏=SCMP)。同氏は日本のF-35部隊は「アメリカの世界支配戦略の重要な位置を占めるという見方もできる」とも、警戒感を込めて述べている。

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Text by 内村 浩介