イスラム過激派の標的となる中国 一帯一路への反発と抵抗(3)−シリア−

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◆中国を標的とするジハード闘争
 そのようななか、中国がシリアへの関与を強め、アサド政権やイラン、ロシアと関係を強化するのであれば、それは間違いなくイスラム過激派の敵意を強めることになる。確かに、ISはシリア・イラクで支配領域を失い、その全盛期と比べ見る影もないが、依然として一部の戦闘員は身を隠しており、IS指導者であるバグダディ容疑者の行方も依然としてわかっていない。また、北部イドリブ県を支配するハヤート・タハリール・シャーム(HTS)や、それから分派した過激派メンバーで構成されるフッラース・アル・ディーン(Hurras al Dine)などのアルカイダ系組織は、現在IS以上にシリアで勢力を維持している。このようなISやアルカイダ系の組織は、パキスタンのバルチスタン解放軍(BLA)のように、中国権益への攻撃を強化することだろう。ちなみに、アルジェリアを中心にサハラ地域で活動するイスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)などのほかのアルカイダ系組織も、以前から中国へのジハードを強調している。

 そして、もう一つの懸念が国内の過激派分子である。中国のシリアへの関与が深まるのであれば、それによって反射的にウイグル自治区の過激派メンバーの活動も活発化する恐れがある。シリアで活動するTIPメンバーが、ウイグル自治区にいる同士たちに攻撃を呼び掛ける声明を出す頻度が高まるかもしれない。中国にとってのシリア進出は、現地からの反発・抵抗だけでなく、国内からの反発・抵抗にも繋がる恐れがあり、二重のリスクを抱えているといえる。

 このようにみると、シリアへの展開は中国にとって大きなリスクとなる。ISやアルカイダからすると、長年唱えるグローバルジハードの中心に中国を置くことになり、それは新たなジハード闘争の始まりになるかもしれない。

Text by 和田大樹