イスラム過激派の標的となる中国 一帯一路への反発と抵抗(3)−シリア−

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 今年1月になって、米国や日本などのメディアから、中国が一帯一路構想に基づいてシリアへ投資を拡大しようとしているとの報道が聞かれた。シリア内戦は2011年以降激化し、難民や国内避難民の数は数百万人に上り、戦後最悪の人道危機とも言われる。そして、イスラム過激派組織イスラム国(IS)の弱体化に伴い、現在のトランプ政権はシリアからの米軍撤退を進めようとしている。そのようななか、中国は力の空白を埋めるかのようにシリアへ接近を図ろうとしているという。しかし、そこには中国にとって大きな脅威が待ち構えている。

◆中国が懸念するイスラム過激派のリスク
 ここにおける中国にとっての脅威とは、イスラム過激派である。長年の問題でもあるが、昨今、北京による新疆ウイグル自治区への締め付けや圧力が国際社会で大きな問題となっている。新疆ウイグル自治区と関係し、中国からの分離独立を求めるイスラム過激派に、東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)やトルキスタン・イスラム党(TIP、両者は同じ組織との見方が強い)などがあるが、北京はこのようなイスラム過激派による国内でのテロを長年警戒してきた。2008年の北京夏季五輪の直前にTIPの活動が活発化したことがあったが、習近平政権は2022年の北京冬季五輪の際もその動向に神経を尖らせることだろう。

 そして中国にとって厄介なのが、シリア内戦が勃発して以降、数百人規模のTIP戦闘員たちがシリアへ流れ込み、そこで拠点を作って活動しているのだ。昨年秋、安田純平さんが解放されたが、安田さんの供述によると、安田さんが拘束されていた施設の看守がウイグル人だったという。シリア北部で活動しているこのような戦闘員たちは、中国へのジハード(聖戦)を呼び掛ける動画やメッセージを配信している。

Text by 和田大樹