空母向け含むF35を105機購入へ その裏側に苦渋の決断
◆トランプ氏の圧力も背景に
F-35の大量購入の裏には、安倍政権の政治的な思惑も見え隠れする。トランプ大統領は、アジア太平洋地域からの米軍の順次撤退を示唆し、日本をはじめとする同盟国に自衛力の強化とそのための米国製兵器の購入の圧力を強めている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、中国の脅威とともに、対日貿易赤字解消の切り札にしたいトランプ大統領の「圧力」を、日本のF-35大量購入の動機に挙げている。
ペンタゴン(米国防総省)は、F-35を「世界で最も先進的かつ、お値打ち価格で攻撃力・防御力に優れた戦闘機」だと喧伝している。各国外遊時に米国製兵器の売り込みに余念がないトランプ大統領も、F-35は特にお気に入りだ。日本などへのF-35売却を自らの成功体験に数えており、購入を決めた各国首脳を称賛することも忘れない。日本とすれば、アメリカの防衛力を繋ぎ止めるためにも、トランプ政権の機嫌を取っておきたいという思惑もあるだろう。
海洋進出の足がかりとして日本の南西諸島海域を支配下に起きたい中国は、特にF-35Bの導入と連動した日本の空母保有計画には、敏感に反応している。ただ、「いずも」型改修空母の艦載機としてのF-35Bの力を過大評価してはならないという米識者の意見もある。中国空母の24機程度に対し、「いずも」は6〜8機のF-35Bしか搭載できないと見られるのに加え、同機に対地戦闘能力を与えると、憲法上の制約がある「攻撃型空母」になってしまため、用途が限られるからだ。実際、日本の防衛関係者も、むしろ離島の小規模空港などでの運用に重点を置いているようだ。
日本のF-35大量購入は、中国の脅威、アメリカの思惑、憲法上の制約に挟まれた「苦渋の決断」という見方もできるかもしれない。