【イスラム国の教訓(1)】IS の台頭、領域支配を可能にしたもの

VOA / Wikimedia Commons

 2014年6月にイスラム国(IS)が台頭し、それ以降国際社会では、「領域を統治するテロ集団が出現した!」かのように日々報じられるようになった。確かに、政府の統治力が十分に及ばない広大な土地があったとはいえ、国家でもない集団がシリアとイラクの国境をまたぐ形で領域を支配するようになったことは、我々に大きな衝撃を与えた。以前にもテロ組織が一定の領域を支配することはあったが、ISによるそれは前代未聞の出来事だった。

 しかし、それから4年が経った今日、その支配領域はほぼ消滅している。2015年にISの支配地域は、一時英国の領土に匹敵するにまで拡大したというが、2016年以降、それには陰りが見え始めた。特に2017年、要衝であったイラク・モスルとシリア・ラッカを奪還されたことは、ISとって壊滅的なダメージとなった。

                                                                                                                 

◆ISはどのような要因で台頭したのか?
 では今、我々はこのISをどう評価したらいいのか。そのためには、ISの成り立ちを振り返る必要がある。簡単に言うと、ISとは元々2003年のイラク戦争によって台頭したイラクのアルカイダ(AQI)を前身組織とし、それ以降、イラク国内の宗派対立や米軍の撤退、アラブの春に伴うシリア内戦などを通して強大化することに成功した過激派組織である。

 特に、ISと同じスンニ派とシーア派の宗派対立、またシリア内戦に伴う東部の無法地帯化は、ISによる支持者の獲得や活動地域の拡大を助長する形となり、結果として組織の拡大を許す最大の要因となった。よって、ISが自らの軍事力や組織力によって支配領域を拡張していったというより、中東における政治的動乱を巧みに利用することで支配領域が拡大していったと表現する方が実態に近い。

Text by 和田大樹