米中留学戦争? 「スパイ」中国人減らしたいトランプ氏 減ると苦しい大学

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◆中国人は増加中 政府はスパイ行為を懸念
 全体の留学生の数が減る一方、中国人は増え続けている。IIEによれば、2017年度の留学生の3分の1は、中国人ということだ。BBCによれば、2000年から2018年の間に中国人留学生は6万人から36万人以上に増加した。ほとんどが科学、テクノロジー、数学、ビジネスを専攻していると言い、年間数十億ドルをアメリカにもたらしている。

 ところがトランプ政権は、外国人による知的財産の盗用阻止を理由の一つにし、中国人学生のビザ申請の厳格化を打ち出した。6月に出されたホワイトハウスの報告書には、中国人学生は安全保障上の脅威となる可能性があり、たとえ本人が望まなくても、中国政府が軍や戦略的野心のために学生たちを情報収集手段として活用することもある、と記されている。

 子供の将来のために海外で良い教育を受けさせたいという中国人家庭にとってアメリカは人気の留学先となっており、米政府のこのような動きは大きな心配の種になっている、とブルームバーグは説明している。

◆もはや大切なライフライン 締め出しはアメリカにとっても痛手
 アメリカの大学にとって留学生が払う多額の学費は大切な収入源だ。政府からの補助が減るなか、公立大学でさえ留学生の受け入れでその財政難の穴埋めをしているとマーケット・ウォッチは指摘する。

 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校もその一つだが、最近になって、同校がビジネスとエンジニアリングの2学部における中国人学生が減少した場合に備えて、その損失を穴埋めするための保険に加入していたというニュースが報じられた。

 ちなみに同校のMBAプログラムの留学生の学費は年間約3万6008ドル(約407万円)、エンジニアリングでは年間3万4762ドル(約393万円)。2017年のビジネススクールの歳入の20%は、中国人留学生からのものだったという。大学側は、保険加入は以前から議論されていたとし、現政権の影響を否定している(マーケット・ウォッチ)。

 前出のマージンソン教授は、外交的論争や貿易摩擦で中国人留学生の流入が止まれば、アメリカの大学に壊滅的影響が出ることも考えられるとしている(BBC)。様々な面ですでに米中は持ちつ持たれつの関係になっているだけに、教育界への両国対立の影響は必至だろう。

Text by 山川 真智子