続々と謎の死を遂げるロシアの外交官 「米大統領選に関わったため」との陰謀論も

Frederic Legrand - COMEO / shutterstock.com

 8月24日に、ロシアの駐スーダン大使が自宅のプールで心臓発作のため死亡した。これでこの9ヶ月の間に、7人のロシア人外交官が死亡したことになる。死因の詳細は把握困難なため、様々な憶測があるが、多くのメディアは暗殺の可能性を示唆している。

◆外交官が次々死亡。ロシアならあり得る?
 CNNは、「9ヶ月で9人の著名なロシア人が死んでいる」というショッキングな見出しの記事のなかで、6人の外交官を含むロシアの高官の死が相次いでおり、心臓発作などの病気が4人、原因不明が2人、銃殺(暗殺を含む)が3人だと内訳を述べ、そのうちいくつかのケースには疑問が残るとする。ロシア側の説明が途中で変わったり、死亡の詳細の入手が困難だったり、捜査がいまだ継続中だったりすることから、自称オンライン探偵や陰謀論者の間では、2016年の米大統領選へのロシアの関与が、これらの死に絡んでいるという推測さえある、と報じている。

 一方、ワシントン・ポスト紙(WP)は、9ヶ月で7人の外交官が死亡していると報じる。CIAに23年間勤めた諜報と防衛の専門家、ロルフ・モワット-ラーセン氏は同紙に対し、「プーチン大統領が法の支配の外でのオペレーションを行っていることに議論の余地はない」とし、アメリカのスパイと妥協したロシアのエージェントは、歴史的に見て消されることになっていると説明する。同氏は、死亡した外交官たちがスパイだったと言いたいわけではないとしつつも、外交官を殺すということはロシアでもまれだと指摘し、本当だとすれば大ニュースだと語っている。

 エスクァイア誌は、死亡した4人の大使に言及し、それぞれの死に関連性があったという証拠はないが、みな長期にわたりシニアレベルでロシアの外交に海外で貢献してきた人々だった説明している。さらに、「海外にいて重要な立場」に就いていても、プーチン政権においては安全ではないと述べ、2006年に亡命先のイギリスで放射性物質により毒殺されたとされる、元ロシア連邦保安庁の幹部、ビクター・リトビネンコ氏の例を上げている。

◆疑惑は的外れ。そもそもの問題はロシア外務省か?
 一方、ロシア在住のアイルランド人ジャーナリスト、ブライアン・マクドナルド氏は、ロシアのRTに寄稿し、CNNを始め、西側メディアが死者の数を見出しにしてセンセーショナルに陰謀論を報じているが、すべて見当違いだと述べている。

 同氏によれば、ロシアはエリツィン大統領時代の1990年代に、経済低迷のため公務員の給料が激減し、若く才能のある外交官たちの多くは民間に転職してしまい、年配者ばかりが残ったという。プーチン大統領時代に入り、若い外交官も採用し始めたが、45~55才という年齢層が現在全く足りていない。経験の浅い30代以下に要職を任せる訳にも行かず、結果としてソ連時代から勤めている高齢外交官をメインにせざるをえないということらしい。

 マクドナルド氏は死因不明を含む病死とされた6人のうち5人が60才以上であったことを指摘し、この世代の平均寿命が60.5才であることから、病死はあって当たり前とし、ロシアを悪く書くことで視聴者や読者を引き付けようとする西側メディアの姿勢を強く批判している。

◆陰謀論は期待する人が作り上げるもの?
 陰謀論で盛り上がる西側メディアだが、WPは、人間とは簡単に説明できる自然発生的なものが手近にあるとき、陰謀だと見る傾向があるという意見も紹介している。陰謀論とは、陰謀を探そうとする我々自身の傾向が作り上げるもの、ということだ。

 また、今回の外交官の連続死のように、とても偶然だけでは説明できないと感じることは、実はよく起こっているのだという。例えばアメリカの人口が2億8000万人とすれば、1日に280回、100万分の1の確立の事象が起こっているはずと、統計学者は説明しているとのことだ。

Text by 山川真智子

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