中国の世界最大ダム計画めぐる数々の懸念 インドは「兵器化」に警戒感

三峡ダム|isabel kendzior / Shutterstock.com

 三峡ダムを上回る巨大な水力発電ダムを、中国がヒマラヤに建設しようとしている。今年3月に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)においてダムの建設計画が発表された。かつてない規模の野心的プロジェクトだが、安全問題や隣国との水利問題などに発展しかねないとして早くも波紋を広げている。

◆中国の環境政策に貢献か
 ダムは「メトクダム」と命名され、完成すれば現在世界最大の発電量を誇る三峡ダムの3倍の電力を供給することになる。水源は、ヒマラヤ山脈の雪解け水を集めて流れるヤルンツァンポ川だ。川は中国南部の国境沿いを西から東に流れ、グレートベンドと呼ばれる湾曲点で大きく方向を変える。メトクダムはこのベント付近に建設される予定だ。川はその後中国国土外へと出て、インド東部とバングラデシュを流れてベンガル湾へと注ぐ。

 ダムの利点として中国政府は、環境対策への貢献を挙げる。中国政府は2060年までに二酸化炭素のネット排出量ゼロの達成を掲げている。水力発電はすでに中国において、石炭に次ぐ第2のエネルギー源だ。豪ニュースサイトの『news.com.au』(5月30日)は、前例のない巨大発電ダムで環境目標の達成に漕ぎつけようとする算段は「奇抜なアイデア」だと評価している。

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Text by 青葉やまと