中国の世界最大ダム計画めぐる数々の懸念 インドは「兵器化」に警戒感

三峡ダム|isabel kendzior / Shutterstock.com

◆インドとの新たな摩擦材料に
 ヤルンツァンポ川下流に位置するインドは危機感を募らせている。水力発電を謳うダムとはいえ、実質的な武器として機能する恐れがあるためだ。ヤルンツァンポ川はメトクダムを抜けると、ほどなくしてインドが実効支配するアルナーチャル・プラデーシュ州へと達し、続いてアッサム州に至る。中国が意図的にダムを高水位に保ち放流をちらつかせれば、十分に政治的な交渉材料になり得る。news.com.auは専門家の見解として、実際に中国がこのようなことを意図しているかは別にしても、コミュニケーションが不足しているためインド側が警戒感を高めている、と伝えている。

 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙(2020年12月11日)も、ダム計画は「インド北東地域の水の安全保障に広範な影響を及ぼす可能性がある動き」だと分析する。洪水期の水位の問題などをめぐり、中国とインドは対立を繰り返してきた。記事は「中国が『上流流域』の地位を握っているため、国境を越えて流れる河川の共同管理を確実にするという問題は、インドにとってほぼ実現不可能な課題となっている」と述べ、インドの窮状を強調する。上流に位置する中国が絶対的に有利な立場を握っている状態だ。

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Text by 青葉やまと