「アフリカ」絵文字にみる、ステレオタイプの課題と多様化の動き
◆求められる、絵文字の多様化
ユニコードは、グーグル、アップル、マイクロソフトといった米国のビッグテックが参加するコンソーシアムだ。日本文化に偏りがある絵文字だが、ユニコードに承認された絵文字は必ずしも多様性を反映するものではないと、『レスト・オブ・ザ・ワールド(Rest of the World)』の記事は指摘する。記事によるとユニコードは近年、より多様性を重視した絵文字を導入し始めてはいるようだ。たとえば、肌の色のバリエーションを増やしたり、障害を持った人やLGBTQ+のコミュニティに配慮したような人物の絵文字を増やしたりしている。一方、現在のユニコードの絵文字承認における重要な基準が、世界的に広く使われること(high usage worldwide)であるため、固有の文化を反映したような絵文字が承認されることは、難しいというのが現状のようだ。
ユニコードの絵文字に対して、オルタナティブな絵文字の提案をするクリエイターも存在する。2018年、コートジボワール人のグラフィック・デザイナー、オプレロウ・グレベット(O’Plérou Grebet)は独自に開発した「アフリカ」絵文字を毎日発表するというプロジェクトを開始した。彼の「アフリカ」絵文字は、コートジボワールやほかのアフリカの国の文化やライフスタイルを反映させたシリーズとして、西アフリカのユーザーに好まれている。絵文字の種類は、伝統文化を象徴するものや食事のほかに、地元の遊び、道具、現地で親しまれているグローバル・ブランドの消費財などが表現されたユニークなものだ。コートジボワールやアフリカ各国の文化に親しみがないものにとっては、教育的な要素もある。
2019年、彼は自身の「アフリカ」絵文字をユニコードに申請したが、現時点ではユニコードからの返答はないようだ。ユニコードを使用しているiOSで、「Africa」と検索すると提案される伝統的な住居の絵文字は、アメリカ人ジャーナリストのサマンサ・スンヌ(Samantha Sunne)が提出したもの。過少評価されがちな東アフリカの先住民族の住居を、世界基準に取り込むというのが彼女の意図であり、まさに多様性をより尊重するような取り組みではあるが、アメリカ人視点での「アフリカ」の多様性が採用されたことは、少し皮肉的で残念な事実でもある。
テキストベースのコミュニケーションが、わたしたちのライフスタイルに不可欠なものとなった現在、絵文字という表現においても、ローカル視点に基づいた「多様性」が新たなスタンダードとなっていく必要がありそうだ。
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