火星にも雪が降る可能性 そのメカニズムとは

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著:David Rotheryオープン大学 Professor of Planetary Geosciences)

 近い将来に火星へ移住するという壮大な計画があるが、火星での生活とは実際のところどのようなものなのか。我々が学んでおくべきことは驚くほど多い。例えば火星の天候についてもそうだ。火星の気候には自然変動があることが既に知られている。そして非常に風が強く、時々雲が発生する (しかし雨が降るには寒く、乾燥している)。では雪についてはどうだろう。火星で暮らしていれば、その赤い惑星が白く染まる様子を見ることができるのだろうか。その可能性はあると、新たな研究により驚くべき結果が示唆されている。

 火星の気温は低い。雪が降ってもおかしくない気温であることは明らかだ。そして火星には氷が存在し、その量は時期により大きく変化する。火星の自転軸 が軌道に対して傾いてできる角度が小さい時、極冠を除き火星の表面に氷は存在しない。この時の自転軸の傾きは25°だ (地球の傾きは23°なので似たような角度である)。しかし火星の場合は自転軸が60°まで傾くことがある。月のような巨大な衛星があれば自転が安定するのだが、火星はこのような衛星を持たないことが原因と考えられている。そして自転軸が大きく傾くことで極冠が広がり、赤道付近にまで多くの氷ができる可能性がある。

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 火星が最後に氷河期を迎えたのは約400,000年前のことだ。それ以降、火星の極冠は小さいままだ。赤道付近で溶けずに残った氷はすべて塵の下に埋まっている

 火星の大気圧は低く、非常に乾燥している。高度数キロメートルのあたりに雲ができる可能性はあるものの、本物の雪が地表まで達することはないという説がこれまでは一般的であった。火星の雲は地球で見られる巻雲に似ており、大気中の少量の水蒸気が (蒸気から直接氷に) 凝結して、暴風で上空へと運ばれた塵の粒の上に形成されると考えられている。

◆火星でも冬景色を見ることができる?
 雲から落ちてくる氷の粒子の大きさはほんの数マイクロメートルしかないので、毎秒 程度しか降下しない。これだけ時間をかけて降下すれば、粒子が地表に到達する前に蒸発してしまう (氷が溶けて液体となる前に直接水蒸気に変化するため、このプロセスを厳密には「昇華」と言う)。季節によっては夜の間に霜が降り、火星の表面に斑点を残すことがあるが、これは大気中の凍った二酸化炭素が水氷の粒の外側を覆うことで、水氷が一時的に大きく、重くなり落下速度が増したためできた跡であると説明できる。

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 ネイチャージオサイエンスが発表した新たな研究の結果、凍った二酸化炭素という不思議なものに覆われなくても極めて小さな水氷が地表まで辿り着くメカニズムが判明した。この発見が正しければ、火星でも地球と同じように本物の雪が降ることが証明されたことになる。研究チームは2つの軌道上を周回する探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤーとマーズ・リコネッサンス・オービター) から得た計測結果を使用し、火星の大気中の気温が高度に応じてどのように変化するのか調べた。その結果、火星では夜になると氷雲の下にある低層大気が不安定になることがわかった。これは低層大気の下側の密度が上側の密度より低くなるためである。

 低層大気が不安定になることで、大気中に下降気流が発生する。下降気流は毎秒約10メートルで移動し、氷の結晶を「蒸発する」間もなく地表へと運ぶ。こうして地表に雪ができるがその層はおそらく薄く、再び雲となり新たな雪となるため昇華して大気中に戻る前に消えてしまう。

 この現象は、地球で言うと「マイクロバースト」として知られる現象に似ている。雷雲の下で60mph (毎時97km) の速度を持つ局地的な下降気流が発生し、木々をなぎ倒す程のパワーを持つことがあり、この現象をマイクロバーストと呼ぶ。同様のプロセスが局地的な大雪の原因ともなる。地表付近の大気の層は温かいため、通常であれば雪の結晶を溶かしてしまう。しかし爆風がその層に穴を開けて雪の結晶を地上へ運ぶことで、大雪が発生するのだ。

 実際に火星の表面まで雪が辿り着く様子はまだ観測されていない。しかし雪が空を舞う様子は確認されている。NASAのフェニックス着陸船は2008年に火星の北緯68°の地点に着陸し、地表の泥を削り取った時にその下から氷を発見したことで有名となったが、表土のみならずその上の空に関する調査も実施していた。フェニックスはライダー (レーダーに似ているがレーザービームの反射を利用する装置) を用いて火星の大気を詳しく調べた結果、雲の層の下に少なくとも二晩の間、雪が舞う様子を観察した。

 フェニックスの調査中にもし十分なパワーを持つ下降気流が発生していたら、ある朝いつもの赤い風景が冬景色へと変わっているのを、数時間だけでも観測できたはずだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by t.sato via Conyac

The Conversation

Text by THE CONVERSATION

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