全世界で加入者数9000万人を獲得したNetflixのユニークな戦略とは
◆Netflixの隅から隅まで
だからといってNetflixは、特定の嗜好を持つ、たった一人の視聴者向けにコンテンツを提供しようとしているわけではない。かといって大勢の視聴者をターゲットにするわけでもない。となると、9300万人もの加入者を誇るNetflixの運営術はいかなるものなのか?
Netflixがとった戦略は、「ニッチ複合」戦略と呼ばれるものだ。これは視聴者が関心を寄せる対象のうち、一握り(1ダース程度かもしれない)をターゲットに番組を制作する手法だ。内容例は、ストーリーが複雑に絡み合う連続ドラマ(「House of Cards」)やアクションシリーズ(「Daredevil」)、ホラーシリーズ(「Hemlock Grove」)、人気俳優(Adam Sandler)を主演に据えた独自制作映画などだ。
こういった手法がとれるのも、インターネット配信ならではだ。Netflixは一度にさまざまなコンテンツを視聴者に提供できる。Netflixが扱うプログラムの総数を把握している加入者はほとんどいないだろう。眼前に提示されるのは、彼らの興味の対象となり得る番組ばかりだからだ。
こういったこともインターネット配信の恩恵だ。オンラインサービスだからこそ加入者の行動に関する広範なデータを収集し、それに基づいたライブラリを作成したうえでユーザーが見たがるようなコンテンツを提供できるのだ。秘密主義で知られるNetflixがどのようなデータを集めているのかはわからない。しかし、世界中のオーディエンスの視聴データが集まる同社は、きわめて規模の小さなジャンルにいたるまで、視聴者の興味のパターンを把握することも可能となったのだ。
Netflixの加入者に、同サービスが抱えるブランドがどんなものか尋ねても、返ってくる答えは人によって変わるだろう。Netflixは一言で表せるものではないのだ。例えるなら、あちこちに小スペースや小部屋のある広大な図書館といったところだ。ほとんどの加入者はフロアから別のフロアへ、とさまようことがない。自分のテイストに合ったコーナーにとどまっていれば良いのだ。
同様の戦略をとるポータルは他にもある。Amazon Videoもその一つだ。しかし、同社にとってテレビや映画のストリーミングは数ある事業の一つにすぎない。Huluもまた似て非なるものだ。HuluはDisneyやNBC、Foxを有する企業のジョイントベンチャーであり、ライブラリもこれらの企業の番組が主となっている。