500年で最悪の干ばつ、欧州に何をもたらしているのか

フランス・サンマーニュ近郊で発生した山火事(8月12日)|SDIS 33 via AP

◆魚の大量死の原因に?
 水不足のもたらす川や湖の生態への影響も目に見え始めている。

 先ごろポーランドとドイツの間を流れるオーデル川で、100トン以上の魚の死骸が見つかり話題になった。この大量死の原因はまだはっきりとわかっていないが、有毒な藻類(ハプト藻)の可能性が指摘されている。この海藻は本来ならば汽水域に繁殖するものなので、淡水のオーデル川に繁殖したということは、オーデル川の塩分が通常より高くなっていたということになる。塩分上昇の理由はまだ解明されていないが、水不足と高い気温が関わっている可能性を指摘する声が上がっている。(20minutes紙、8/22)

 また、ロワール漁業連盟の23日の発表によれば、フランスのマブリーにある池では、11トンの魚が窒息死しているのが見つかった。その原因は「水不足と藻類の発生があいまった」ことだと考えられている。つまり、繁殖した藻が夜間に大量の酸素を消費するため、水中の酸素が不足し、魚が窒息したのだ。(ル・パリジアン紙、8/23)

◆牛乳不足は目前?
 農作物の不作、値上がりに続き、フランスでは今後数ヶ月牛乳不足となる恐れが指摘されている。フランスの全国農業組合連合会(FNSEA)経済委員会のフィアリップ会長の解説によれば、第一にこの時期にあるべき牧草地の草がまったく生えていないこと、第二に、乳牛に必要な飼料であるアルファルファやトウモロコシが、今年はほとんど成長していないことが原因だ。(ファム・アクチュエル誌、8/7)

 そうでなくても、高温というストレスを受けると牛の牛乳生産量は落ちることが知られている。加えて水不足、餌不足となると牛乳の量も質も落ちるのは必至だ。

 飲み水となる地下水が潤沢になるには、雷雨や集中豪雨のような雨ではなく、長期間にわたる梅雨のような降雨が必要だと考えられている。果たして今年の秋は欧州に雨をもたらしてくれるのだろうか。

【関連記事】
オリーブオイル高騰の恐れ 史上最悪の干ばつ、スペイン産オリーブ収穫減
リゾットの米も… 70年で最悪の干ばつ、イタリアの稲作に大打撃
カリフォルニア州、干ばつの影響で今夏も水・電力不足の危機

Text by 冠ゆき