「もったいない」以上に深刻な「食品廃棄物」

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 食品廃棄物は、レストランや、学校、企業の食堂だけではなく、家庭からも大量に出ている。何気なく悪くなった鶏肉やカビの生えたトマトをゴミ箱に捨てるとき、それは温室効果ガスを大量発生させるものを捨てているということを忘れてはならない。また、食品が埋め立て地などで分解されるときメタンが放出される。これは二酸化炭素に比べ25倍以上の温室効果がある。

 家庭で、購入したものをすべて消費するように意識すれば、必要最低限のものだけを購入するようになり、フードシステム全体に大きな影響を与えることができる。食品供給業者は、国民の効率的な需要に合わせ生産量を減らすと考えられ、スーパーマーケットはより少ない食料を保管するようになり、工場から店舗へ向かうトラックの数も減る。食料品を適切に保存するために店舗で必要な冷蔵庫の数も減る。肥育場を埋める牛は少なくなり、それらを養うために栽培されるトウモロコシや大豆の占拠する場所も小さくてすむ。

 食品廃棄物の削減は解決可能な問題である。食品廃棄物を減らすことは、社会的、経済的、環境的利益をもたらすことがわかっている。なぜなら、食料が無駄になるとき、水、エネルギー、労働力、農薬、肥料、土地などの生産するために使用された資源も同時に失われるからである。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」ことを目指している。

◆食の未来
 では、私たちにできることは何だろうか。政府レベルでは、UNEPの食品廃棄物インデックス・レポートは、国家戦略と食品廃棄物減少を結びつけ、2030年の目標にどれだけ近づけているか追跡するため、家庭、外食産業、小売のすべての食品廃棄物を測定するための方法を採用することを各国に奨励している。またビジネス面では、スーパーマーケットなどの食品関連企業は、モノのインターネットテクノロジーなどを活用して保管温度や在庫レベルを正確に監視することで、農産物の品質と安全性を維持することができる。

 また、私たちも消費者として家庭や地域でできることがたくさんある。国連食糧農業機関(FAO)は、健康的な食事をする、必要なものだけを購入し食品を長く賢く保管することなどを提案している。またほかにも、普段は捨ててしまう茎や葉は適切に調理し食べる、発生した生ゴミはコンポストを利用し処理するなどが可能である。昼食に食べるハンバーガーや萎れた野菜をゴミ箱に捨てるとき、プライベートジェットやガソリン車ほど明らかに環境を破壊するものではないとしても、私たちが日々の食生活の選択によって、地球環境が悪化しうることを自覚しなければならない。

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Text by sayaka ishida