CO2排出ゼロ、水から水に戻る「水素エネルギー」「人工光合成」は夢ではない
◆製鉄でも水素を利用
前稿で、水素とCO2からメタノールを製造する方法を述べたが、水素は意外なところにも利用されている。鉄鋼業界のCO2排出量は日本全体の14%と突出して多く、理由は鉄の作り方にある。
鉄鉱石中の鉄は酸化された酸化鉄、コークス(炭素)を使って鉄鉱石から酸素を奪えば(還元)鉄ができ、CO2が発生する。したがってCO2削減のためには、製鉄技術の抜本的な変更が欠かせない。コークスの代わりに、還元剤として水素を用いれば排出されるのはCO2ではなく水となる。これは、ガソリン車はCO2を排出するが、燃料電池車は水を排出するのと同じことだ。この実証実験がすでに日本製鉄君津製鉄所で進んでいる。
ごく最近、三菱重工も同じ試みとなる世界最大級の実証プラントをオーストリアの鉄鋼大手と開発し、2021年にも欧州で稼働を始めると報道されている。
水素の利用に関しては、水素を二酸化炭素と反応させることでメタンに変換、そのまま都市ガス導管に流し、燃料として用いる取り組みも検討されている。
◆水素は水から生まれて水に戻る
前述したが、水素を得る方法に、よく知られた水の電気分解がある。しかし、電気の使用は脱炭素に向けて逆行することになる。水を簡単に水素と酸素に分解し、これらを燃料電池として使い、電気発生後に生成する水をまた分解するプロセスは、水が循環するだけだから究極の再生可能エネルギーとなるはずだ。これは夢のような話だが、これをどう達成するか、ヒントは自然界の光合成にある。