二酸化炭素を削減するには?「親炭素術」の回収・貯留・利用
カナダのカーボン・エンジニアリングのプラントでは、空気を水酸化カリウム溶液に通し、CO2を炭酸カリウムに変え、その後さまざまな処理を行って炭酸カルシウム(CaCO3、石)の塊にしている。炭酸カルシウムを900度で焼成(温度は異なるが、火山の爆発に相当する反応)すると酸化カルシウムとCO2が得られる。取り出したCO2を圧縮し、パイプラインを通して地下に埋められている。この反応は前稿で述べた地球化学的CO2循環反応そのものだ。
日揮は、セラミック製のゼオライト膜を活用したCO2分離・回収技術の実証試験を米国テキサス州で開始している。日本ガイシと共同開発したゼオライト膜は1ナノメートル(10億分の1メートル)以下の微細な穴を多く持つのが特長で、ちょうどCO2を通す大きさなので、原油生産時に出てくるメタンなどほかのガスから分離することができる。
◆二酸化炭素を岩にする
CO2を地下に埋め込み、岩に変えるプロジェクトが走っている。これは前稿の地球化学的循環で述べた自然界の摂理の人工版と考えてもいいだろう。
スイスの環境スタートアップ企業のクライムワークス社は、アイスランドでこのプロジェクトを展開している。この施設では、まず周囲の空気を吸引し、固体の吸収剤フィルターでCO2を吸着させ、CO2を含まない空気を大気中に戻す。フィルターがCO2で飽和状態になれば、近くの地熱発電所からの廃熱を使用して100度に加熱しCO2を放出させ、回収する。
次に、地熱発電所から施設に流れてくる水を利用して、回収したCO2を地表から約2000mの地下に送り、自然の鉱化作用によって、数年かけてCO2は炭酸カルシウム(石)に変換される。したがって、CO2は永久に地下に貯蔵されることになる。利用した水は、地熱発電所のサイクルに戻される。この施設は、24時間365日稼働し、年間4000トンのCO2を大気から、ろ過することができ、自然界でその量のCO2を木に吸収させるには8万本の木が必要になるという。
昨年9月、ドイツの自動車メーカー・アウディ(Audi)は、この世界最大規模のプロジェクトに参画し、CO2削減に向けて未来のテクノロジーを推進していると発表した。これにより、アウディはクライムワークス社を通して、大気から1000トンのCO2を除去することになり、CO2削減に寄与している。
生コンにCO2を封じ込めると、コンクリートの強度が増加する。そもそもセメントは石灰岩(CaCO3)を焼成し製造、そのときにCO2が排出され、我が国CO2排出の3%はセメント業界が占める。三菱商事は、カナダのカーボンキュアと資本提携して、このプロジェクトを進めている。