二酸化炭素を削減するには?「親炭素術」の回収・貯留・利用
「脱炭素」の潮流が世界を駆け巡っている。我が国も、「温室効果ガス2050年実質ゼロ」の宣言(本当は「完全ゼロ」を目指すべきだが)を契機に、にわかに脱炭素の風向きが大きく変わってきた。筆者は前の稿で、現況の下、脱炭素に向けて現実的に何ができるのか、その試みを概説した。ここでは二酸化炭素(CO2)そのものに焦点を当て、経済産業省の14重点分野の一つ、「カーボンリサイクル」を、科学的(化学的)な視点で考えてみよう。
◆二酸化炭素そのものを回収する
大気中に排出されたCO2そのものを直接回収する技術が注目を集めている。この技術は、ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)と呼ばれ、火力発電の廃止や再生エネルギーの導入など経済や社会活動に制約を及ぼすことなく、CO2だけを削減することができる脱炭素の救世主的方法と言えるだろう。国内外のいくつかの例を紹介する。
アミン類(アンモニアNH3など窒素原子を含む化合物)がCO2を吸収することは周知の事実だが、一緒に水を吸収してしまう欠点があった。最近、メタキシリレンジアミンというアミンを用いると、この欠点を克服できることが見出された(神戸学院大の稲垣教授)。CO2吸収後、比較的低温の120度でCO2を放出するので、早期の実用化が望まれる。CO2の利用については後述する。
少し専門的になるが、地球環境産業技術研究機構(RITE)は、CO2を吸収する化学吸収液(2-イソプロピルアミノエタノール水溶液に、ピペラジン誘導体やエタノールアミン誘導体を含むもの)や固体吸収材(多孔質のシリカゲルにアミンを担持させたもの)を開発している。CO2を化学的に吸収する方法の開発は重要だ。
現在、日本CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)調査が、苫小牧沖の海底1000m以上深くにあるすき間の多い砂岩などからできている貯留層に、製油所から排出されるCO2を大気放出前に回収(活性アミンプロセス)して貯留する実証プラントを稼働している。かなり大がかりな施設で、実用化を期待したい。
本年1月20日、JFEエンジニアリングは、清掃工場(三鷹市と調布市が整備したクリーンプラザふじみ)から排出される排ガスからCO2を回収し、利用するCCU(Carbon capture and utilization:二酸化炭素回収利用)プロセスの実証実験を開始すると発表した。このプラントのCO2吸収方法も、天然ガスプラント建設などで実績のあるアミン吸収法だ。CO2回収を清掃工場に適用すると、ごみに含まれるバイオマス分をあわせ、「ネガティブカーボン(CO2回収量>排出量)」を達成することが可能になる。